<緊急解説>韓国が非常戒厳令、尹大統領が出した最悪の悪手、その理由と朝鮮半島で起こりうる最悪のシナリオ
韓国の尹錫悦大統領は12月3日深夜、対国民特別談話を通じて、「非常戒厳を宣布する」と明かした。この報道に接し、長年にわたり北朝鮮のスパイ活動を調査してきた筆者は、尹大統領が戒厳令という伝家の宝刀を抜いた理由にピンとくる一方で、最高権力者が最も犯してはならない悪手を打ったと非常に残念な気持ちになった。 そうこうしているうちに、韓国で45年ぶりとなった戒厳は、わずか6時間で解除された。本稿では、日本人に馴染みのない戒厳を説明するとともに、尹大統領が戒厳を宣布するに至った理由と今後の影響について解説していく。
非常戒厳を宣布する状況にあったのか?
戒厳とは、いわゆる非常事態宣言のこと。戦争や大規模災害など有事に、憲法や法律の効力を一部停止して、行政と司法が軍隊に統制下に入る状態のことを指す。 戒厳令はそのための命令を意味する。もちろん、その目的は非常事態からいち早く脱して、通常の状態に復旧することにある。 現在、日本では戒厳に関する規定はないが、韓国では憲法で戒厳を規定し、細部を戒厳法と戒厳施行令で定めている。韓国の戒厳は、「非常戒厳」と「警備戒厳」があり、今回宣布されたのは前者だ。いずれも大統領が宣布する。 非常戒厳とは、「大統領が戦時・事変またはこれに準ずる国家非常事態時、敵と交戦事態にあるとか、社会秩序が極度に撹乱され、行政及び司法の機能の遂行が顕著に混乱した場合に軍事上の必要に基づくとか、公共の安寧秩序を維持するために宣布する」とされている。 つまり、戦争や行政サービスがストップするほどの大規模デモが頻発しているような場合に、軍隊が社会秩序を回復するために発令されるのだ。ゆえに令状なしの逮捕や集会・デモの禁止も許容されている。 では、韓国はそのような状態にあったのだろうか。北朝鮮がウクライナ戦争に参戦したことにより、朝鮮半島情勢が緊迫化しているが、非常戒厳を宣布する状況にあったとは言い難い。尹大統領は、なぜそのような情勢判断に至ったのだろうか。