業界全体で1兆円以上の収益!「政府と日銀のドタバタ劇」の裏で大きな利益を上げる「業界」とは?
日銀のキャッシュフローは赤字転落、バランスシートも悪化へ
金利の引上げが続くと別の問題が生じる。それは、日銀のバランスシートの悪化だ。日銀の決算をみると、’24年3月末時点、保有している国債の残高は590兆円、保有国債の平均利回りは0.289%となっている。 もし、500兆円の超過準備に対して0.5%の金利を支払うとなると、日銀の国債からの利息収入を、超過準備への支払利息が上回るという〝逆ザヤ〟状態になる。逆ザヤが続くと、日銀のキャッシュフローは赤字に転落する可能性が出てくる。 また、保有する国債には、すでに9兆円以上の含み損が発生している。こうしたリスクを冒してまで、超過準備に多額の利息を支払う合理性があるのだろうか。 ◆最高益のメガバンクにも…「国民負担の補助金」は許されるのか 一部には、マイナス金利政策で痛んだ銀行のバランスシートを修復するため、といった見方もある。もしかするとこれが本当の理由かもしれない。 だが、米国のように、政策金利の引上げが短期間で何度も実施され、長期金利の方が短期金利よりも低いという「逆イールド」が長期間続いたのなら話は分かる。銀行にとってはかなりの痛手となり、実際に米地銀の破たんも相次いだ。 しかし、国内の銀行は様相がまったく異なる。第二地銀こそ振るわないが、第一地銀の収益はここ数年でかなり持ち直している。メガバンクに至っては、23年度決算において、三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)と三井住友FGは最高益更新、みずほFGもほぼ最高益と絶好調だ。3行の純利益を合計すると3兆円(!)を超える。 超過準備の内訳をみると、都市銀行が圧倒的で200兆円を超えている。つまり、メガバンクとりそな銀行、埼玉りそな銀行の合計5行で、超過準備の金利収入は5000億円に上る(大部分がメガバンク3行)。こういうところに、国民の負担を伴う補助金のような利益が供与されてしまうのだ。 今後、日銀は海外の中央銀行と同じように、超過準備に政策金利の誘導目標と同じ金利を付与し続けるのか。それとも、どこかのタイミングで修正が入るのか。次回の日銀金融政策決定会合は、9月19日・20日。記者会見で日銀総裁に質問がされることを切に願う。 取材・文:松岡賢治 マネーライター、ファイナンシャルプランナー/証券会社のマーケットアナリストを経て、1996年に独立。ビジネス誌や経済誌を中心に金融、資産運用の記事を執筆。著書に『ロボアドバイザー投資1年目の教科書』『豊富な図解でよくわかる! キャッシュレス決済で絶対得する本 』。
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