業界全体で1兆円以上の収益!「政府と日銀のドタバタ劇」の裏で大きな利益を上げる「業界」とは?
実質的には「国民負担」!?
世界同時株安を起こした7月末の日銀の利上げ。政府と日銀による緊急会合開催や、日銀副総裁の〝火消しコメント〟が連発されたが、いまだ金融市場の動揺は続いている。こうしたドタバタ劇の裏で、大きな恩恵を受けている業界がある。銀行だ。 実はNISAでも「金(ゴールド)」が買える! 価格上昇が止まらない「金」に賢く投資する方法とは? 当座預金の超過準備への適用利率が0.1%から0.25%に引き上げられ、業界全体で「1兆円以上の収益」が見込まれる。しかも、この増収は「実質的な国民負担」につながるという。専門家が解説する。 ◆個人や企業から預けられたお金が…日銀の当座預金には「金利」が付く 金融市場の混乱のインパクトがあまりにも大きかったためだろう。7月末に変更された日銀の金融政策の中身に関して、重要な議論がなされていない部分がある。それは、「補完当座預金制度の適用利率については0.25%とする。」というくだりである。以下、やや専門的な解説となるが、非常に重要なことなのでお付き合い願いたい。 民間銀行は、つねに日銀の当座預金にお金を預けている。準備預金制度というルールにより、銀行は、個人や企業から預けられたお金を、一定の比率で日銀の当座預金に預けることが義務となっているからだ。日銀に預ける必要最低限の金額を「法定準備預金額」といい、この最低金額を超えて預けられている部分を「超過準備」と呼ぶ。 そして、補完当座預金制度というのは、この超過準備に金利を付ける制度である。日銀は、銀行から預かっている当座預金のお金に利息を付けているのだ(民間銀行の当座預金には金利は付かない)。 ◆1兆3000億円の実質「税金」を銀行に分配!? これのどこが問題なのか。超過準備の金額が莫大なのだ。7月分(7月16日~8月15日)の平均残高は519兆円。これに0.25%の金利が付くと年間で約1兆3000億円になる。これがそのまま、銀行業界に行き渡ることになる。 そして、ここがポイントなのだが、日銀から年間でこれだけのお金が銀行に流れると、その分、日銀が政府に収める国庫納付金が減る。それは、政府にとってみれば、歳入が減ることを意味する。つまり、日銀が銀行に供与している利息というのは、実質的に国民負担と捉えることができる。誤解を恐れずに言えば、税金に近いお金を銀行に分配しているようなものなのだ。 話はここで終わらない。後述するように、今後、日銀の金融政策に修正がなければ、政策金利が引上げられるたびに、超過準備の金利も上がることになる。0.25%の引上げなら0.5%になる見通しだ。そのときに超過準備が500兆円あれば、利息は2兆5000億円(年換算)に上る。