「死ぬ5分前までしゃべっていたい」――引退に揺れる、上沼恵美子の孤独と本音
死ぬ5分前までしゃべっていたい
いくつもの冠番組を抱え、長い間、視聴率と向き合ってきた。 「私はテレビタレントですから、視聴率命です。収録中に視聴率は分かります。例えば、このゲストが今しゃべってる、今落ちてるわ。ああ、これはカットしてもらおうって思いながらしゃべってます。番組が続く秘訣なんかないんですよ。いつも汗かくことです」 心血を注いだ番組が終わり、老後の楽しみを探したが、しっくりくるものは見つからない。 「陶芸もやりましたし、俳句もひねりまくりました。犬の絵ばっかり描いてるんですけど、描きすぎて描く犬種がなくなりました。ずっと仕事で10代から来てますから、仕事に勝る刺激、喜び、快感、ないんですよ」 ここしばらくは、引退も頭をよぎった。 「引退は、周囲がさせてくれるんですよね。『引退します』って私が言うたところで、何の興味もないと思うんですよ。自然に地上波なくなっていきました。もう引退してるんですよね。でもこの間、黒柳徹子さんとご一緒させていただいて、私が『もうこのへんで』って言うたら、『やめないでいいんじゃないの? 引退なんて言う必要ないわ』って。ふわっと景色が開けました」
「全身が、細胞が、しゃべることが好き」。本音を言えば、死ぬまでしゃべりで勝負がしたい。 「死ぬ5分前までしゃべっていたいです。体が覚えてるんですよね。ウケなかった時の冷や汗出る感覚も覚えてます。ホールが揺れるほどお客さんに笑っていただいた快感も知ってます。人生の喜びですよね。みんなはできないことじゃないですか。勝ち取った喜び。登山する人って、なんであんなしんどいことすんのやろと思うんですけど、頂上で旗立てた時、『やった』と思うそうですね。私もそうなんです。頂上に登った人の、あの気持ちなんだと思うんですね」 昨年12月、YouTube「上沼恵美子ちゃんねる」を始めた。「視聴率がなくていい」と思ったが、再生回数が出ると聞いて苦笑する。 「生きてる限りは、『ああ、それそれ』って言われたい。みんな何かモヤモヤしてるんだけど、なんで腹立ってんのか言葉にできない。そこで私が『こうでこうで、こんな時、腹が立ちますね』と言うと、『それやそれや』って言ってくださるんですよ。そのアンテナをいつまでも持ち続けたい。地上波なくなっても、どこかで私を見てください。絶対スカッとさせてみせますから。具体的に表現し続けたいと思っております。まだやります」