横浜DeNAドラ2左腕の坂本裕哉がプロ初登板初勝利…なぜ今永、浜口、東と”左腕王国”の系譜が続くのか
今永、浜口、東と続く横浜DeNA”左腕王国”の系譜を引き継いだ。しかも、先の3人は揃ってプロ初登板で勝てなかったが、坂本はベイスターズで初となる大卒新人左腕の初登板初勝利の勲章を手に入れた。特に東は、立命館大で2学年上の直系の先輩。寮で同部屋になったこともある。「あの人に出会えたことでプロの指標が見えた」という「一番尊敬する人」である。 坂本は、福岡大付属大濠高時代は、阪神にドラフト4位指名された浜地真澄の影に隠れた存在だった。「高校最後の夏はケガをしちゃって浜地に負担をかけることが多くて不完全燃焼だった」。だが、坂本は、「絶対にプロになる」と大学へ進み、そこで同じ左腕の東に出会った。「東さんという最高のお手本がいて大きく成長できた」。4年春に5勝、防御率0.84の成績でMVPを獲得し、プロへの道を切り開いた。その東とは、プロに入ってすれ違いが多く、なかなか話せる機会がなかったが、トミー・ジョン手術を行い、今季絶望となった東から、こんなバトンを託されたという。 「今年はおまえに任せたぞ」 坂本は「東さんの分まで今年は頑張ろう」と決意したという。 今永には、試合前のルーティンを教えてもらった。 「僕からアドバイスしたわけではありませんが、坂本が、試合前に何を食べていますか、何をしていますか、そういったことを質問してくれたので、僕のルーティンの話をしました」と今永が言う。 23日に中日を相手に、あわや完封の好投を見せた浜口のピッチングからは、「攻め方など参考になった」。前日には浜口の登板映像を見てイメージを重ねている。左腕が左腕を育てる。これこそが脈々とつながっている”左腕王国”の系譜である。 では、なぜ横浜DeNAの左腕の系譜は途切れないのか。その秘密は、スカウト陣の眼力にある。2012年からスカウトの責任者を務めてきた現顧問で、元巨人の名捕手、吉田孝司氏に、その秘訣を聞いたことがある。 吉田氏は、「セにはいい左打者が多いので同じ力なら左腕を選ぶ」と、”左腕王国”誕生の経緯を語り、そして重要なスカウティングのポイントを「センスの有無とカーブ、スライダーがキレるかどうか」と説明してくれた。腕、肘を上手く使えなければ変化球はキレない。今永、浜口、東らは、大学時代から、全員、ストレートはもちろん変化球が良かった。チェンジアップ、スライダーを操れる坂本は、その”吉田の眼”に「プロで成功する」と映ったのだろう。 ラミレス監督は、「将来、エースになりえるポテンシャルを持っている。野球選手は、そのポテンシャルをどう生かすか、だ。完璧な人はいない。彼はバッティングもよく能力は高い」と絶賛した。 次回登板は、通常のローテーションであれば、7月2日の巨人戦(東京ドーム)となる。右足首の回復状況次第だが、坂本は、「現状は大丈夫です。ちょっとひねっただけです。次の試合で長いイニングを投げベストのピッチングができるように調整したい」という。 座右の銘は、グラブに刺繍している「磨穿鉄硯(ませんてっけん)」という言葉。「強い意志を持ち続けて、それを達成するまで変えない」という意味だそうで、小学生の頃、福岡の病院の先生から教えられ、大学4年の頃にもらった手紙に書いてあったことから強く意識するようになったという。坂本は、まず「プロ野球選手、そして初勝利」というひとつの意思の達成を叶えた。 「継続して先発ローテーを守るのが1年目の目標。それを達成できれば、数字はついてくる」 坂本はルーキーイヤーの目標をそう掲げている。