横浜DeNAドラ2左腕の坂本裕哉がプロ初登板初勝利…なぜ今永、浜口、東と”左腕王国”の系譜が続くのか
2日続けて2桁安打をマークしていた中日打線をキリキリ舞いさせたのが、このチェンジアップだった。スプリットの握りで、左腕独特のスクリューボールのようにスッと視界から消えるように落ちる魔球。この日、坂本は81球を投じたが、球種の内訳はストレート27球、チェンジアップ29球、カーブが5球、スライダーが20球。最も多く投じた球種がチェンジアップだったのだ。中日ベンチは「どうしてもチェンジアップを意識しすぎた」という。 2回には阿部、京田を、そのチェンジアップで連続三振。5回には京田、郡司を、またチェンジアップで連続三振である。それでも、坂本自身、「チェンジアップは、一番いい時の感覚ではなかったです。低め、低めを意識して投げることができたので打ち取れたのかなと思います」という自己評価だから末恐ろしい。 坂本は左打者には大胆にインサイドを使った。 中日は、絶好調の大島、高橋、京田の3人を線にしようと打線を大胆に動かしてきたが、その左打者を坂本が封じ込んだ。圧巻は4回の高橋に対する配球である。なんと5球続けて徹底してインサイドを突き、最後は144キロのストレートでセカンドゴロ。 ラミレス監督は、「戸柱のリードが良かった。そこがポイント。坂本の球種をうまく使ったし、チェンジアップが左打者に効果的だった」と、戸柱のリードを称えた。インサイドを攻めるメンタルこそがプロで生き抜くために不可欠の才能である。 その投球フォームも坂本の武器。足を一度上げて止める二段モーションだが、左腕が体に重なって打者から見えないように隠れるのだ。しかも、同じ腕の軌道でウイニングショットのチェンジアップ、スライダー、カーブを混ぜ込んでくるためタイミングがとり辛い。メジャーで、「スモーキー」と呼ばれる一種のテクニックで、伝説の左腕、江夏豊氏の腕も、体に隠れリリースの瞬間までほとんど見えなかったという。ボールを速く見せ、変化球への対応を難しくさせるのだ。 「本当ならもう1イニングいけた」というラミレス監督だが大事をとって6回でベンチに下げた。オースティンの来日1号を含む5得点で坂本を援護した打線は、その後も止まることを知らず、結局、10得点を奪い、ルーキーのプロ初勝利をサポートした。 坂本は無人のスタジアムでラミレス監督と記念のツーショット写真を撮った。 「絶対に勝ちたかった。思い描いたような監督とのツーショットができて良かったなあと思います。初回から1球、1球、一人ひとり全力の積み重ねが無失点という形になりました。打線が点を取ってくださったので自分も楽に余裕を持ってマウンドに上がれました。野手の皆さんに感謝したいと思います」 ロペスから手渡されたウイニングボールは後ろポケットに収めた。 誰に勝利を報告したいか?の問いに、坂本は無観客試合で球場に来れず、故郷福岡でテレビの前で応援している家族だと言った。