【書評】重い障害の将軍徳川家重と忠臣、その真実を隠密が見ていた:村木嵐著『まいまいつぶろ 御庭番耳目抄』
問題があれば父をいさめよ、と遺言した吉宗
吉宗は家重の嫡子を5歳で元服させ、家治(いえはる=10代将軍)と名乗らせた。幼い頃から父よりも祖父といる時間が長かった家治は、非の打ち所がない子に育った。 将軍を退いて6年の吉宗は68歳、家治は15歳になった。吉宗は家治に、父(家重)と忠光の関係を見つめ続け、もし問題があれば父をいさめよと遺言する。そして、別れ際に家治に言った。 「そなたが家重を将軍に押し上げたのじゃ。そのことだけでも、わしにとってもそなたほどの孝行者はいなかったぞ、家治」 来年のNHK大河ドラマは、将軍家治の時代の話だ。家治が『まいまいつぶろ』の2冊に描かれた吉宗、家重の大きな期待を背負った将軍であることを知っておくのも参考になるだろう。
【Profile】
斉藤 勝久 ジャーナリスト。1951年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。読売新聞社の社会部で司法を担当したほか、86年から89年まで宮内庁担当として「昭和の最後の日」や平成への代替わりを取材。医療部にも在籍。2016年夏からフリーに。ニッポンドットコムで18年5月から「スパイ・ゾルゲ」の連載6回。同年9月から皇室の「2回のお代替わりを見つめて」を長期連載。主に近現代史の取材・執筆を続けている。