コロナが引き剥がした「死の覆い」――極北から戻った探検家、5カ月ぶりに見た日本【#コロナとどう暮らす】
コロナ禍、心配なのは「犬」
――今年はカナダへ渡れなかった以外は、予定通り、探検を遂行できましたが、来年はまだどうなるかわかりませんね。冬、またグリーンランドに行けるのでしょうか。 行けなかったら行けないで、執筆に専念できるからいいのかな。探検中、まったく原稿が書けないというのもつらいので。ただ、預けている犬が心配ですね……。処分されたら嫌だな。 ――処分? 犬を1年間、つないどくのって、すっごい大変ですから。現地の人に餌代さえ送っていれば大丈夫だと思うんですけど。 ――餌代は角幡さんが払ってるんですね。 大変っすよ。めちゃめちゃ食いますから。夏はそんな食べないけど、冬は人間以上に食うかも。1頭でひと月あたり8000円くらいかかるので、12頭で約10万。飼ってるだけで、年間120万ぐらいかかってる。あと、1年サボると、次の年、走ってくれるのかどうかもわからない。せっかく犬との関係性ができたのに、2年間、会わないと、僕のことを忘れちゃうかもしれない。来年は、村の周りを走らせるだけでもいいので、シオラパルクまでは行きたいですね。自分のことばかり考えていて申し訳ないんですけど。でも、コロナに関しては、最初の騒動を経験していないので、僕はこれからもずっと当事者になれない気がするな。 --- 角幡唯介(かくはた・ゆうすけ) 作家・探検家。1976年、北海道芦別市生まれ。早稲田大学卒業。同大探検部OB。2003年に朝日新聞社に入社、08年に退職。2018年『極夜行』(文藝春秋)で、「第45回大佛(おさらぎ)次郎賞」「Yahoo!ニュース|本屋大賞 ノンフィクション本大賞」(第1回)を受賞。『空白の五マイル』『雪男は向こうからやって来た』など著書多数。 中村計(なかむら・けい) 1973年、千葉県船橋市生まれ。同志社大学法学部政治学科卒。ノンフィクションライター。某スポーツ紙を7カ月で退職し、独立。『甲子園が割れた日 松井秀喜 5連続敬遠の真実』(新潮社)で第18回ミズノスポーツライター賞最優秀賞、『勝ち過ぎた監督 駒大苫小牧 幻の三連覇』(集英社)で第39回講談社ノンフィクション賞を受賞。近著に『金足農業、燃ゆ』(文藝春秋)。8月15日に光文社新書から『クワバカ クワガタを愛し過ぎちゃった男たち』刊行予定。ユーチューブマイベスト3は「少年かむいカレーライス。soto飯」「高須幹弥高須クリニック」「アキラ先輩」。