五輪のメダルは誰のため? 堀米雄斗が送り込んだ“新しい風”と、『ともに』が示す新しい価値
「人の失敗は祈りたくない」結果を待つ四十住さくらが祈ったこと
スケートボードではもう一つ、堀米とともに東京で歴史に名を刻んだ女子パークの四十住さくらの発言も印象深い。 予選の1回目のランで4位につけたが、その後は得点を伸ばせず10位で予選敗退。“22歳のベテラン”は、東京にも増して低年齢化が進んだ女子のパーク種目での連覇を逃した。 1組目での出場だったため、自らの試技を終えた時点では周囲の結果によって予選突破の可能性を残していた四十住は、インタビューにこう答えている。 「最後まで諦めずに。でも、人の失敗は祈りたくないので。でも、決勝には行きたいので、ちょっと変な気持ちになっちゃうんですけど、行けるように祈ります」 “日本”を主体にしてオリンピックを見ていると、日本人選手の活躍、好結果、端的に言えばメダルを望むあまり、ややもすると他国の選手の失敗を祈って観戦してしまう。 結果がすべて、勝利至上主義の弊害が問題の一つとも言われているスポーツ界にあって、選手本人から「人の失敗は祈りたくない」と断言されて、ハッとした人もいるだろう。 堀米がそうだったように、四十住も金メダリストの重圧に苦しみ、オリンピック予選では大いに苦しんだ。右ひざじん帯を断裂する大ケガに見舞われたこともあり、日本勢上位3人の代表内定をかけた大会では、準決勝で敗退し翌日の決勝の結果を待って切符をつかむことになった。 代表内定後、自らのことのように喜んだのはこの大会で2位に入り、間接的な“援護射撃”をした6歳年下の親友、スカイ・ブラウン(イギリス)だった。 「さくらと一緒にパリで滑りたい」 イギリス人の父と日本人の母の間に宮崎で生まれたスカイは、四十住が13歳、スカイが6歳の時に出会い、そこからスケートボードを通じて友情を深めていった。 スカイや今大会パークの覇者、アリサ・トゥルー(オーストラリア)がともに日本人の母を持つことが話題になったが、たとえ日本に縁がなくてもスケートボードの選手間にはどんなときにも“ファミリー”としての連帯感がある。 競技に携わる誰もが、オリンピックチャンピオンの実力者はパリの舞台に立つべきだと率直に思っているのだ。 この空気感はスケートボードに普段触れることのない人たちにも画面越しに伝わり、多くの共感を呼んだ。それを象徴するのが堀米や四十住のコメントだった。