五輪のメダルは誰のため? 堀米雄斗が送り込んだ“新しい風”と、『ともに』が示す新しい価値
国別メダルランキングの作成はオリンピック憲章違反?
メダルを逃したアスリートが「なぜ謝るのか?」「誰に謝っているのか?」そもそも「謝る必要はあるのか?」は、ここ数大会日本でも議論されてきたトピックで、少なからず税金が投入されている強化費を使う競技がある以上、結果に対して責任を! と考える人も一定数いる。だがそもそもオリンピック憲章の第6章には、「オリンピック競技大会は、国家間の競争ではなく個人またはチーム間の競技である」と明記されていて、「IOCと組織委員会(OCOG)は国ごとの世界ランキングを作成してはならない」と明確に定めている。 それでもメディアは国別メダル数をメインに報道するし、IOC、組織員会が運営するオリンピック公式サイトでも、「国別ではなく、NOC(各国の国内オリンピック委員会)のチーム単位」というエクスキューズをした上で、メダル獲得数ランキングを表示している。これがオリンピックの精神に反しているという指摘もあるが、多くの人は、オリンピックは国を代表した選手が国別にメダル数を争う大会だという認識でいるのではないだろうか。
「国単位」で質問するインタビュアーと堀米のズレ
スケートボード男子ストリート予選終了後、そんなメディアと堀米の“ズレ”を感じるやりとりがあった。 「まず、白井選手も決勝進出を決めました。そしてこの後の小野寺選手も期待が高まっています。日本人3選手として決勝を戦う思いはどうでしょう?」 インタビュアーが堀米に聞く。前回大会金メダルの主将格である堀米に、チームジャパンについて聞くことに違和感を覚える人は少ないかもしれない。 「本当に世界のみんなががんばっているし、決勝でも予選でも僕のチームメイトとか友達も滑っていて。日本のチームとして戦っているけど、それだけじゃない思いもあるので、全部を背負ってがんばりたいです」 堀米の答えはインタビュアーにとっては肩透かしだったはずだが、オリンピック憲章に照らせば、実は国別の対抗戦であることを意識したこの質問のほうが本質からズレている。 今大会では予選19位に沈んだシェーン・オニール(オーストラリア)は堀米が幼い頃から憧れていたスケーターであり、現在はデッキブランド『April』のチームメイトでもある。白井空良、小野寺吟雲は、日本代表であると同時に『NIKE SB』のチームメイトであり、NIKE SBにはナイジャ・ヒューストンをはじめとして、世界のトップスケーターたちが名を連ねる。 堀米が本拠にしているロサンゼルスで練習をともにする選手もいるし、何よりオリンピックに出場するようなスケーターたちは日常的に世界中の大会やコンテストで顔を合わせる“仲間”でもあるのだ。