Jリーグを襲う中国の脅威
Jリーグ勢が、アジアチャンピオンズリーグ(ACL)で苦戦を余儀なくされている。グループリーグの4試合を終えた段階で、昨季のJ1で3位までを占めたガンバ大阪、浦和レッズ、鹿島アントラーズが最下位に低迷。レッズは未勝利が続いている。 ガンバが頂点に立った2008年度を最後に、日本勢はACLの決勝に進んでいない。2010年度以降は苦手としてきた中東勢ではなく、オーストラリアを含めた東アジア勢に引導を渡されている。 そのなかでも中国の広州恒大には、2013年度の準決勝でレイソルが2試合合計で1対8と粉砕されるなど、圧倒的な実力差を見せつけられてきた。今季もアントラーズが敵地で3対4と敗れている。 その一戦を現地で視察したJリーグの村井満チェアマンは「完全なる力負け。言い訳ができない」と危機感を募らせた上で、広州恒大や北京国安などに力負けする原因の一端をこう説明する。 「財政規模は選手強化に比例する。スピードがあって決定機を逃さない、強力な外国人選手がそろっている」 広州恒大の運営資金は日本円にして約500億円。ヨーロッパのビッグクラブと同等の資金を駆使し、今年1月には現役のブラジル代表FWリカルド・グラールを中国サッカー史上で最高額となる移籍金1500万ユーロ(約21億円)でクルゼイロから獲得した。 16チームで構成される中国スーパーリーグに優秀な外国人選手が集まる流れは、ここ数年で一気に顕著になった。親会社の経営難に伴い、韓国Kリーグの有力クラブがそろって財政危機に陥った昨年からは、韓国でプレーしていた外国人が次々と中国へ移籍。アジアにおいて独り勝ち状態となっている。 J1のあるクラブの幹部は、「この流れはしばらく変わらない」とこう続ける。 「外国人選手は結局、お金に尽きる。経済成長の伸び率が鈍ったといっても、中国のチームの親会社の大半は不動産系の企業。とてつもない余剰金を抱えるバブル状態にあるので、お金がどんどんチームに流れてくる。創設された頃のJリーグのように、外国人選手の名前でお客さんが入る状況にも後押しされている」 広州恒大の親会社・恒大地産集団も不動産企業で、年間の売上高は日本円で17兆円に達する。今シーズンのスーパーリーグで首位を走り、ACLでレッズを下した北京国安の親会社は、中国最大の金融複合企業の一部門である中信国安グループ。ACLでガンバに完勝した広州富力の親会社も不動産企業だ。 もっとも、誰もが高額年俸が約束される中国スーパーリーグでのプレーを希望するわけではないと、前出の幹部は指摘する。 「たとえば中国で5億円の年俸をもらっている外国人選手に対して、6掛けから7掛けの金額を提示すればまず日本に来ますよ。中国は蹴って走るだけのチームが少なくないし、ピッチ状態が劣悪なスタジアムも多い。大きなけがをしたくないと思いは万国共通であり、それならば環境のいい日本となるんだけど」 しかし、Jリーグが置かれた現状が数億円単位の年俸拠出を許さない。横浜フリューゲルスの吸収合併問題が起こった1998年を経て、Jリーグでは「身の丈経営」が標榜された。