天空を切り裂く「オレシュニク」 ロシア・北朝鮮のミサイルが迎撃困難ならば、どんな手段があるか
空母「ジョージ・ワシントン」の新たなる能力
前述のTWZは「西側諸国から供給されたパトリオット地対空ミサイルシステムは、キンジャールや地上発射弾道ミサイルに対して特に効果的だった。最高速度マッハ10のオレシュニクは、パトリオットのようなシステムが確実に迎撃できる速度よりも速い」と懐疑的な見解を示している。 迎撃が難しければ、どんな手段がありうるのか。 アメリカの原子力空母ジョージ・ワシントンは、2024年11月23日に、9年ぶりに日本の横須賀を事実上の母港として戻ってきた。 横須賀を事実上の母港としたアメリカの空母が、再び、横須賀を事実上の母港とするのは、初めてだ。 ジョージ・ワシントンは、横須賀に入港する前の13日から、北朝鮮の核・ミサイルの脅威を念頭に置いた日米韓3カ国訓練「フリーダム・エッジ24-2」に、イージス艦ヒギンズ、およびデューイ、P-8A哨戒機、KC-135空中給油機などを率いて参加。この訓練には、日本の護衛艦「はぐろ」、P-3C哨戒機、F-15 及びF-2戦闘機、E-767空中警戒管制機、それに、韓国の駆逐艦「西厓柳成龍」(DDG993)、「忠武公李舜臣」(DDH-975)、P-3哨戒機、F-35Aステルス戦闘機、F-15K戦闘攻撃機などが参加した。 だが、この演習のさなか、空母ジョージ・ワシントンの甲板の向こうには、日・米・韓、いずれにも属さないフネの姿が。 中国の東調(ドンディアオ)級情報収集艦である。艦上の大小三つの球体には、弾道ミサイル等の飛翔体を追跡するレーダー・アンテナを内蔵し、艦橋の後方にある高さ40m以上の四角錐型のマストには、無線通信検出アンテナ、レーダー信号受信アンテナなど計47個の各種アンテナやレーダー探知アレイがあるとされる。 もちろん、日米韓の共同訓練に対して、中国海軍が高い関心を示しても不思議ではない。 空母ジョージ・ワシントンは、9年前とは異なる。だからこそ、中国海軍は、空母ジョージ・ワシントンの新たなる能力を調べるため、東調級情報収集艦をあからさまに派遣したのではないだろうか。 では、空母ジョージ・ワシントンは、 9年前と何が違うのだろうか。 空母ジョージ・ワシントンは、空母カールヴィンソン(CVN70)や空母エイブラハムリンカーン(CVN72)に次ぐ、アメリカ海軍で、3隻目のF-35Cステルス戦闘機搭載空母艦だ。 F-35Cは、機体のあちこちにあるカメラの映像を、パイロットが被るヘルメット、JHMCSに映し出し、パイロットは機体の真下も透かすようにしてみることができる。 まるで、アニメの世界が現実になったような戦闘機だ。 そして、F-35同士は、MALDという独特な通信手段を持つ。さまざまな周波数に対応するとみえるドンディアオ級情報収集艦が、これ見よがしに空母ジョージ・ワシントンに近づいたのは、離発艦を繰り返すF-35Cの能力、なかんずく、通信手段への関心の高さだったのかもしれない。 航空自衛隊やアメリカ空軍のF-35Aより、45パーセントも大きな主翼をもつF-35Cは、作戦行動半径が約1100kmもあり、対馬と九州の間に空母を展開すれば、物理的には、北朝鮮の上空に向かい、往復できることになる。 機内の爆弾倉にだけ、ミサイルや爆弾を搭載すれば、ステルスモードとなり、ミサイルや爆弾が放出されれば、“敵”のレーダーには、何もない空間に、突然、爆弾やミサイルが映ることになる。 そして、“敵”レーダーを破壊して、ステルス性能が必要なくなった場合は、ミサイルや爆弾を機内だけでなく、主翼の下の吊下装置6カ所に爆弾やミサイルをセットする“ビーストモード”で敵に襲いかかることになる。