天空を切り裂く「オレシュニク」 ロシア・北朝鮮のミサイルが迎撃困難ならば、どんな手段があるか
ウクライナ攻撃で使用されたミサイルの一つについて、プーチン大統領は「極超音速で飛ぶ新型のMRBM、オレシュニク」「実験的な中距離弾道ミサイル」等と述べた。 【画像】ロシアがウクライナ・ドニプロに対し、新型中距離弾道ミサイルで攻撃
ICBMでありながらMRBMとしても使用できる弾道ミサイル
プーチン大統領は、ついに踏み切った。 2019年に失効したとはいえ、INF条約(通称、中距離核全廃条約)では、開発も保有も配備も禁止されていたいわゆるINF射程のミサイルをウクライナ攻撃に使用したのである。 1988年に米ソ間で発効したINF条約は、軍縮史上、画期的な条約だった。 射程500km~5500kmの弾道ミサイルと巡航ミサイルを、核、非核を問わず、全面的に禁止、全廃させたのである。 その裏には、当時の中曽根首相がレーガン大統領(当時)に言った“ソ連(当時)のINF射程ミサイル配備をソ連中央部に集中させるというアドバイスも功を奏した”、とされている。 つまり、旧ソ連と米国のINF射程のミサイルを欧州だけでなく、アジアも含む全世界規模で削減するというアイデアである。この結果、旧ソ連は、INF射程ミサイルの全廃に応じることになり、それがINF条約として実を結んだ。 INF条約は、日本の安全保障にも大きな役割を果たした。 旧ソ連の日本に届く、核・非核ミサイルは射程500km未満に制限されて、種類と数量は、大きく減少し、新たに開発されるミサイルも制限を受けたのである。 ところが、1991年にソ連が崩壊後、ロシアは、2011年、奇妙な新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)、RS-26の生産に着手する。ICBMの射程は、条約上、5500km以上と定義されるが、米露ともに、当時、配備しているICBMは、すでに射程1万km以上が趨勢であった。ロシアでは、2010年からRS-24 Yarsという三段式で射程10500kmの大陸間弾道ミサイルが運用可能となっていたが、基本的には、そのRS-24から1段減らし、2段式にしたRS-26ミサイルを開発した。 RS-26は、2012年5月の発射試験で、1万kmには遙かに及ばないものの、飛距離は5800kmとなって、5500km以上飛ぶという能力を示したので、ICBMと定義された。こうして、RS-26は、当時、まだ有効であったINF条約には、抵触しないことになったのである。 ところが、RS-26は、2012年10月、翌13年6月、15年3月の発射試験で、いずれも、飛距離約2000kmだった。 地上発射弾道ミサイルは、射程が、0~1000kmが、短距離弾道ミサイル(SRBM)、1000~3000kmが、準中距離弾道ミサイル(MRBM)、3000~5500kmが中距離弾道ミサイル(IRBM)に分類される。 つまり,RS-26は、ぎりぎり、ICBMでありながら、MRBMとしても使用できる弾道ミサイルだったのである。まるで、INF条約で禁止されていた射程を、穴埋めするようなミサイルだった。 「ウクライナへの攻撃の画像には、6つの弾頭が標的に落下し、複数の弾頭が着弾した様子が映っている」 11月21日のウクライナ攻撃で使用されたミサイルの一つについて、プーチン大統領自らが、「極超音速で飛ぶ新型のMRBM、オレシュニク」「実験的な中距離弾道ミサイル」「最高速度はマッハ10」と述べた。 しかし、米国防総省のシン副報道官は「(ウクライナに発射された)IRBMはロシアのRS-26ルベジ大陸間弾道ミサイルモデルに基づいている」(2024/11/21)との見解を公式に明らかにした。 前述のように、プーチン大統領は、オレシュニクは、MRBM(射程1000~3000㎞)としたが、米国防総省は、IRBM(射程3000~5500㎞)としたわけで、見解が異なっていた。 米軍事情報専門サイト、TWZ(2024/11/22付)は、ロシアがウクライナに向けて発射した「実験的な中距離弾道ミサイル」について、米国政府当局者の分析を紹介。「ロシアはおそらくこうした実験的なミサイルをほんの一握りしか保有していないだろう」(米軍事情報専門サイト、TWZ 2024/11/22付)との見解も紹介した。 だが、こんなミサイルは、迎撃可能なのだろうか。