日銀・黒田総裁会見4月27日(全文3)信用コストの増加リスクに注意が必要
金利の安定を重視する局面になったのか
テレビ東京:今、世界的に公的債務が増えてきているような状況でもありますけども、そうした中で、どうなんでしょう、これまで物価の安定というのを重視していた中で、より今というのは長期的、金利の安定というのを重視するような局面になったということなんでしょうか。 黒田:物価の安定というのはやはりどこの中央銀行でも最大の使命であることは間違いないわけですし、現時点でもそこは変わってないと思いますけども、足元の世界経済の状況はコロナウイルスの感染の拡大によって、先ほど来、議論されているように、需要面でも供給面でも両方圧縮されているという、非常に異例の経済危機になっているわけです。そうした下で、各国とも物価が今すぐ上昇するような状況にないということは事実でありますけれども、あくまでも中央銀行が最大の使命としている物価の安定ということを放棄しているわけではなくて、現状においてインフレをもたらすことなく最大限の金融緩和をするということが一番重要でありまして、将来、物価がもっと上がってきたらその時点で十分、金融の引き締めができますので、むしろ今はあくまでも経済の落ち込みを防ぎ、金融、特に企業金融、民間の金融が十全に回っていくようにするとともに、金融市場の安定を図るということが最大の、当面の中央銀行としての課題になっているということだと思います。 別に金利だけっていうことではないと思いますけども、いろんな意味で民間の金融の仲介機能が損なわれないようにするとともに、金融市場の安定を図るということがやはりこの局面では一番、中央銀行として重要なことだというふうに思います。
中央銀行のバランスシートに市場が注目する恐れは?
ロイター通信:ロイター通信の木原です。2点あるんですけれども、今回は必要なだけ無制限に上限を設けず国債を買うということで、そういうコミットメントをするというのはほかの中銀もやってはいますが、これによって金利のターゲットを主眼としているというYCCから市場の関心がちょっとぼやけてしまって、再び国債の買い入れや中央銀行のバランスシートに市場の関心が注目してしまうっていう可能性、恐れっていうのをどれぐらい意識されたのかというのが1点目です。 2点目なんですけれども、以前、総裁は、超長期金利の過度の低下というのは副作用もあって望ましくないということを発言されていましたが、今回こうやって国債を無制限に買うことによってそこら辺はどう変わるのか。要は以前、やっぱりイールドカーブにある程度スティープ化の動きがあるほうが望ましいということなのか、そこはもうちょっと変わったということなのか、その2点をお願いします。 黒田:他の中銀も、限度を設けずに国債を買うということを始めた中銀の数も増えてるのはそうですし、あるいはイールドカーブ・コントロールを明示的に入れている、例えばオーストラリアの中銀とかそういうところはあるわけでして、イールドカーブ・コントロールの下でそれを、つまりイールドカーブを低位に安定させるために必要なだけ国債を買うというのはある意味で当然のことであり、FEDにしてもオーストラリアの中銀にしても基本的には同じような考え方でやっておられると思うんですが、むしろ金利から量にいくというんじゃなくて、量のほうはもう限度なくということであるというふうに思っていまして、あくまでもこういう状況の下で金融が目詰まりしないように、そして長期金利が上昇しないようにということがポイントだというふうに思います。 それから超長期のうんぬんというのは、別にイールドカーブがあまり寝てしまうと好ましくないねということ自体は変わらないと思いますけれども、だから今の時点でそれをうんぬんするよりも、やはりなんといってもイールドカーブ・コントロールの下で、イールドカーブ全体を低位に安定させるっていうことが最も重要だというふうに考えております。