若手研究者は「まるで個人商店」負担となる研究費調達、元教授陣が支援 阪大の試みに期待
多くの研究者が外部資金を獲得して実績づくりを目指す中、大阪大が運用を始めたユニークな制度が若手研究者に好評だ。退職した元教授陣が「コンシェルジュ(総合世話係)」となって外部機関に提出する書類作成などを支援し、若手が研究に割く時間を確保する取り組みという。制度の導入後、外部資金の採択数が2・75倍に増加するなど効果を生んでいる。 【図で説明】研究コンシェルジュが若手研究者の活動を手助けする 阪大大学院工学研究科が令和5年から実施するのが「研究コンシェルジュ」制度。導入の背景には、同科の教授約130人のうち40代がほぼ2割を占めるなど、比較的若手が多いことがある。 若手の教授らは自身の研究を進める傍ら、研究室の運営や学生の指導などを一手に担う。さらに外部機関から研究費を調達するため、慣れない書類作成にも追われ、負担は決して小さくない。 そのため、大学側が目を付けたのが退職した元教授らだ。任期付きの「特任教授」として再雇用し、先輩研究者の立場から外部に提出する書類を添削するほか、研究室の運営や研究計画などについて助言。外部資金の採択率アップを狙うとともに、研究が軌道に乗るまでを手助けする。 ■研究費獲得にハードル 「研究者の本分は研究のはずが、今や研究資金の確保から研究室の運営まで担っている。まるで個人商店だ」。阪大で半導体の研究に長年従事し、コンシェルジュ第1号として再雇用された谷口研二特任教授は、若手を巡る現状をそう語る。 全国の国立大が平成16年、国の組織から独立した国立大学法人となって以来、研究費を取り巻く環境は厳しさを増している。研究や教育に使う国からの「運営費交付金」は右肩下がりで減り、国の外郭団体など外部機関が公募する「競争的資金」に頼らざるを得ないという。 ただ、外部からの資金獲得にはハードルがある。例えば、文部科学省が所管する日本学術振興会の科学研究費助成事業(科研費)は、研究の背景や社会的意義、計画をまとめた申請書類を提出し、審査員を納得させる必要がある。書類の書き方には「コツがある」とされ、採択率は20~30%程度にとどまるのが現状だ。 ■客観的助言「ありがたい」