若手研究者は「まるで個人商店」負担となる研究費調達、元教授陣が支援 阪大の試みに期待
日本の科学技術分野での研究力低下に歯止めをかけようと、研究者らも声を上げ始めている。昨年9月には、主な研究資金となる科学研究費助成事業(科研費)の予算増額を求める要望書を国に提出。物価高などの影響で科研費が実質的に目減りしていると訴える。
要望書は、研究者延べ約220万人が所属する学会連合などの連名で、一般からも3万6千筆以上の署名が集まった。呼びかけた生物科学学会連合(東原和成代表)は、学会などがまとまって要望書を出すのは初めてとし、背景に研究費不足の常態化があると明かす。
国立大への運営費交付金の減額傾向が続く中、研究費の資源は科研費に集中する。ただ、科研費自体の予算は毎年2400億円程度と頭打ちの状態で、要望書は「国際競争力を発揮することがもはやできない状況に直面している」と強調。その上で、物価高や出版費用の高騰なども考慮すれば4800億円以上の予算が必要と増額を求める。
同学会は「軌道に乗った研究はすでに育った木のようなもの。それに水をやるだけでは次世代が育たず、イノベーション(革新)につながる研究の種は生まれない。研究者自身から発信することが重要」としている。(小川恵理子、楠城泰介)