若手研究者は「まるで個人商店」負担となる研究費調達、元教授陣が支援 阪大の試みに期待
そこで、コンシェルジュの出番となる。科研費の審査員を務めた経験もある谷口氏は、制度導入直後の令和5年、科研費の申請を控えた工学研究科の舘林(たてばやし)潤准教授(48)に書類の表現や内容などを助言した。
《研究内容が過多な印象》《高度な技術を使う材料を作製するメリットを(審査員に)理解してもらう必要がある》。舘林氏と面談しながら添削し、申請は無事に採択された。舘林氏は「申請が2~3年通らず悩んでいた。客観的な助言をもらえ、とてもありがたかった」と振り返る。
工学研究科によると、制度導入後の6年の科研費の採択数は、前年の2・75倍に急上昇。昨年にはコンシェルジュ1人を新たに採用した。
谷口氏は「外部から研究費を得ようとすると、おのずと雑用時間が増える。少しでも経験が役に立てば」と話した。
■組織運営や資金獲得に忙殺され…
科学分野を中心に日本人のノーベル賞受賞が近年相次ぐ中、日本の研究者が自身の研究に集中できる環境になく、研究力低下につながると懸念されている。平成16年の国立大の独立行政法人化で国からの運営費交付金が削減され、各研究者が組織運営や外部資金獲得などに忙殺されていることも要因に挙がる。
文部科学省の調査によると、国立大教員の職務時間に占める研究時間の割合は、法人化前の14年度は50・7%だった。ところが、法人化から10年超を経た30年度には40・1%まで減少した。
文科省が別に実施した教員の意識調査によると、研究時間を制約する要因で最多は「組織運営のための会議・作業」で77%。「研究費獲得のための申請書類作成」も59%に上った。事務作業や後進育成に加え、資金獲得の手続きも重くのしかかり、研究時間が削られて論文作成などに影響が出ているとの声もある。
法人化に伴う財政状況の悪化や研究力低下の懸念を受け、文科省は昨年7月、国立大の機能強化に向けた検討会を設置し、議論を続けている。
■研究費不足が常態化