オールドローズとは?古い時代から栽培された優美なバラ
四季咲き性の大輪の現代バラが生まれる前、主に15~18世紀の西洋で栽培されていたつる性(または半つる性)のバラたちをオールドローズと呼びます。一部の品種で、現在もその優美な姿を楽しむことができます。『趣味の園芸』で連載中の「姫野流 つるバラを楽しむ12章」、第6回のテーマは「オールドローズの魅力」。9月号より、一部抜粋してお届けします。
オールドローズは2つの系統に大別される
オールドローズは西洋の古いバラの品種を中心とする便宜上の呼び名で、学術的な区分はありません。私としては、四季咲き性をもつ中国のコウシンバラと、西洋の古いバラの系統を交配して確立された比較的新しい系統(オールドモダンローズ)と、それ以前の系統(オールドクラシックローズ)とで特徴が異なると感じます。 古代ローマ帝国の時代から栽培の記録があるガリカローズやダマスクローズは本当に古い西洋のバラといえます。ルネサンス絵画に見られる白いアルバローズや花弁の多いケンティフォリアローズは、それらから派生した系統とされています。 大航海時代に入り、プラントハンターたちにより東洋から四季咲き性のあるコウシンバラの仲間がヨーロッパに紹介されると(18世紀後半ごろ)、春以外も咲く新しいバラを求めて、意欲的に交配が行われました。新たに生み出された系統にポートランドローズやブルボンローズ、ハイブリッドパーペチュアルローズなどがあり、すべての品種ではありませんが、古い時代のバラの優雅さにコウシンバラの返り咲き性、花弁の先がとがる剣弁、ほのかな甘い香りが加わり、よりモダンで華やかな印象を受けます。 19世紀にはナポレオン1世の皇后ジョゼフィーヌによる庇護や芽つぎなどの技術が確立し、新品種の作出が加速していきました。このころから作出者や交配などの記録が残されているものも多く見受けられます。 今月は猛暑のさなかのひと休み。9月号ではご家庭のつるバラとしても魅力的な優美なオールドローズの世界をご紹介させていただきます。季節柄、台風対策についてもお伝えします。 ●連載「姫野流 つるバラを楽しむ12章」 八ヶ岳でバラ農場を営む姫野由紀さんが、1年間の連載でつるバラの基礎知識、広さや高さに合った品種の選び方、美しく咲かせる栽培のコツ、思いどおりの風景をつくる仕立て方などをお伝えしていきます。 姫野由紀(ひめの・ゆき) バラ栽培家 1972年、兵庫県生まれ。10歳からバラ栽培を始める。一般企業勤務を経て故村田晴夫氏のばら園のスタッフに。2012年より八ヶ岳の農場を引き継ぎ、約1000品種のバラの苗木の生産・販売、品種選びや栽培管理のアドバイスを行う。つるバラやオールドローズをはじめ古花、名花にも造詣が深い。 『趣味の園芸』2024年9月号 姫野流 つるバラを楽しむ12章「第六章 オールドローズの魅力」より