「気候変動対策をしなければ事業が終わる」オランダ金融企業の決心とは
今回ご紹介するのは、金融企業「INGグループ」のサステナビリティに関する取り組みです。 INGの特徴は、彼らの事業の中核である住宅ローンを使って気候変動対策を進めていること、その際に、顧客の行動変容を促すサービスを組み入れている点にあります。具体的に彼らがどのようにサステナブルな行動をサポートしているのか、見ていきましょう アイ・エヌ・ジー・グループ(ING Group) 本社所在地:オランダ 創立:1991年 事業内容:金融業
気候変動対策がビジネスにおいて重要な理由
INGはオランダの大手市中銀行です。その業務の中心は、オランダにおける住宅ローンや、不動産関連ビジネスに対する融資。そんなINGが直面する大きな課題は、気候変動による水面上昇です。 国土の4分の1が海抜ゼロメートル以下にあり、そこに国民の6割が生活するオランダでは、水面上昇による国の水没が目の前に迫った危機です。その土地にある住宅やビルが水没してしまうと、人々は借りているローンを返済できなくなり、INGは不良債権を抱えることになる、そんなストーリーが現実味を帯びはじめています。 そのため、気候変動対策は単なる「地球のために良いこと」ではなく、INGの重要な担保を水害から守る、「ビジネス上の重要な取り組み」と認識されています。 では、CO2を削減するために、どのような活動をするのが合理的でしょうか? INGは、慈善活動や自社の省エネ活動などよりも、事業そのものである融資や投資を通じてCO2を削減していくのがもっとも効果的だと考えています。 INGももちろん慈善活動を進めていますが、その額は1000万ユーロほどで、金融業務に関わるコスト(人件費やオフィスの維持費など)は約18億ユーロです。それに対し本業である投資や融資には2000億ユーロもの金額が運用されています。 INGの支出概算から考えると、慈善活動を倍増させたり、自社の建物のCO2を削減したりするよりも(もちろんこうしたことにも取り組んでいますが)、全体の割合が大きい投融資に関わるお金をうまく使って、CO2削減を目指すのがもっともレバレッジの効いたやり方なのです。