「気候変動対策をしなければ事業が終わる」オランダ金融企業の決心とは
「エネルギー貧困層」の支援
他方で、INGの顧客ターゲットから外れるような人々もいます。オランダのような先進国であっても、1700万人の人口のうち100万人は貧困レベルで暮らしています。 毎日の生活に必死な彼らは、地球環境に良い家にしようとはなかなか考えられません。このように経済的に困難な状況にあるために、エネルギー効率を高めるための投資ができず、結果、高い電気代やガス代を払い続けている人々は「エネルギー貧困層」にあると位置付けられています。 こうした人々にとっては、まず経済的困窮から抜け出すことが重要です。貧困から抜け出せば、この方たちはINGのローンサービスを利用できる顧客ターゲットに入ってくる可能性がある、遠回りであってもINGにとって市場を拡大する一つの手段になるのです。 エネルギー貧困層の人たちも、銀行口座を持っていることが大半です。そこでINGは、銀行口座のデータを活用し、エネルギー貧困層に該当する顧客を特定したうえで、彼らが、適正な助成金や補助金を受け取ることができるように支援する取り組みを始めました。 多くの顧客は、住宅ローンや電気代、公共料金支払いを銀行口座からの引き落としにしています。こうした引き落としに遅延がある場合はその顧客が財務的に困窮していると判断できます。具体的には、1年間に8回以上の支払い遅延があった人は、エネルギー貧困層であると判断します。 そしてINGはこうした顧客に対して、政府や自治体からの手当や補助金を受け取ることができるのかを特定し、具体的な申請方法をアドバイスしています。多くの貧困層の人々は、政府からの手当や補助金を受け取る権利があるにもかかわらず、制度が複雑であるために申請をしていないことが多いためです。 これにより、貧困層の財務的な負担を軽減し、貧困から抜け出すことで、遠回りながらも、いつかエネルギー効率を高めるための住宅への投資が可能になるようサポートしています。