ロングスロー論争に終止符?!…青森山田が3大会連続決勝進出!
ロングスロワー拝命をこう振り返ったことがある郷家は、SNS上で是非論が過熱していた帝京大可児戦後に自身のツイッター(@GOKE_YUTA)を更新。現継承者の内田を含めて、青森山田というチームに関わる全員が長い歴史のなかで共有してきた、誇りにも近い思いを代弁している。 「どんな形でもゴールはゴール。使える武器は使う。ロングスローから3得点。さすがです」 ロングスローが脅威となれば、必然的にライバル校も追随する。矢板中央もそのひとつで、準々決勝で青森山田に敗れた前々回大会を機に取り入れた。準決勝では青森山田の倍近い11本ものロングスローを島崎が投げ込んだが、身長182cmのDF秋元琉星(3年)、186cmのDFタビナス・ポール・ビスマルク(3年)、そして浦和レッズ加入が内定している182cmの藤原らの牙城を崩せなかった。 「確かにチャンスにもなり、ピンチにもなるのがロングスローですけど、きちんと対策を講じて対応していけば、それほど怖いものではないと思っているので」 ロングスローに関しては一日の長があると言わんばかりに、黒田監督は「何でもできるサッカー」のなかに、ロングスローに対する完璧な守備もあると矢板中央戦後に言い切った。具体的には相手のターゲットとなる選手を複数で挟み込んで空中戦で競り合うことと、ゴール前で人数を割いてスペースを消すこと、そして常に相手より早くセカンドボールへ反応する集中力の高め方となる。 特にセカンドボールを拾えば、ロングスローに対して相手のセンターバックが攻め上がっているケースが多いだけに、カウンターを仕掛けられるチャンスも生まれる。4度目の挑戦で悲願の決勝進出を狙った矢板中央の高橋健二監督は、完敗に脱帽の表情を浮かべるしかなかった。 「セットプレーで得点をあげて、セットプレーで失点しないようにしっかりと準備をしてきたつもりですけど、さらにその上をいかれてしまった。原点に帰って、もう一度挑戦します」 同じ埼玉スタジアムで、再び無観客で行われる11日の決勝では山梨学院(山梨)と対峙する。青森山田が15回目の出場にして初めて決勝へ進んだ2009年度の第88回大会。前半11分に喫した失点を最後まで取り返せず、初出場初優勝の快挙を目の前で見せられたという因縁がある。 「11年前は私も地に足がついていない状況で、気がついたら決勝が終わっていたというか。自分自身がまだヒヨッコだったと感じさせられたゲームでしたが、いまもチャレンジャーであることに変わりはありません。11年前の悔しい思いと去年のリベンジと、いろいろな意味合いがかかってきますけど青森山田らしく、積み上げてきたものをぶれることなく出して戦いたい」 前半のうちに2点をリードしながらも静岡学園(静岡)の猛攻の前に連続3失点を喫し、連覇の夢を砕かれた前回大会の忘れ物を取り戻すために。攻守両面で隙のないチームに変貌を遂げ、ロングスロー論争に終止符を打った今年度の青森山田の集大成となる戦いは、午後2時5分にキックオフを迎える。 (文責・藤江直人/スポーツライター)