「さすがに高い」「美味しいけど次はないかな」との声も…。100円台のRTD市場に殴り込んだ1缶298円のアサヒビール「未来のレモンサワー」。安値競争から逃れられる?
市場原理的に新商品や珍しいものは一時的にははやるが、「定着」するのは相当難しい。そして、前述のように消えたブランドは枚挙にいとまがない。 例えば、現在のRTD市場を牽引するサントリーは2019年に「カロリ。」というカロリーオフが売りだった商品を「マーケティング上の理由」で終売。 2013年にはイギリスのロックバンドであるザ・ローリング・ストーンズのベロのロゴ「Lips&Tongue(リップスアンドタン)」をあしらった「ストーンズバー」という栄養ドリンク風味のカクテルを、なぜか若者向けに展開。案の定、目標の半分も売れず、翌年シリーズは打ち止めとなった。
そして、缶ではないが、モルソン・クアーズ・ジャパンの「ZIMA」は2021年に日本から撤退していた。かつては「若者の酒」というイメージだったが、この時期に撤退したのは完全にストロング系に押し負けたことを意味する(2023年に白鶴酒造が独占輸入販売契約を取得し、販売再開)。 そして、アサヒビールのストロング系といえば「もぎたてまるごと 搾りレモン」「ハイリキ9」「スパークス」などがあったが、日本初のチューハイブランド「ハイリキ」を守るためなのか、アルコール度数を7%に戻して、味もプレーンとレモンを残しただけで、ほかは淘汰されてしまった。
なお、現在の同社の主力RTDは「贅沢搾り」「樽ハイ倶楽部」「ザ・レモンクラフト」だが、他社製品と比べると、売れ筋商品とは到底いえない。ハイリキと贅沢搾り以外、これまで同社で売れたRTDはないのだ。 そのような懸念点もあるため、未来のレモンサワーの定着化には疑問符がつく。こんな言い方をすると元も子もないが、ストロング系に限らず、RTDは安いに越したことはない。もう誰も「現実逃避」のために、ストロング系は飲んでいないと思うが、それでも298円出して缶のレモンサワーを飲める者たちはきっと居酒屋に行くだろう。