「さすがに高い」「美味しいけど次はないかな」との声も…。100円台のRTD市場に殴り込んだ1缶298円のアサヒビール「未来のレモンサワー」。安値競争から逃れられる?
このヒット商品の技術を応用した未来のレモンサワーは、甘みのある「オリジナル」と、無糖のサワーを使った「プレーン」の2種類があり、輪切りのレモンはそのまま食べることもできる。 そんな同商品で筆者が特に驚いたのは、缶を開ければレモンが出てくることではない。そのアルコール度数の低さである。 ご存じの通り、ストロング系は7~9%という度数がデフォルト。よくいわれていることだが、500mlのストロング系に含まれるアルコール量は36gであり、これはアルコール度数40%のテキーラに換算するとショット3.75杯になる。
それが、未来のレモンサワーのアルコール度数は5%。ビールと同じ度数であり、1月に同社が宣言した「健全で持続可能な飲酒文化を目指し、高アルコール商品の展開を控えることにした」という言葉を体現したような商品である。「負け惜しみだ!」と騒いでいた筆者が恥ずかしい。 さらに、特筆すべき点はアルコール度数の低さだけではなく、価格もそうだ。 ストロング系をはじめとした缶チューハイだけではなく、RTD市場は安さを売りにしていた。例えば、-196℃ストロングゼロは350mlで162円、500mlで220円である(いずれもメーカー希望小売価格。以下同)。サントリーだけではなく、そのほかメーカーもこの値段設定に追随している。おかげでストロング系は安く簡単に酔える飲み物となった。
つまりは、「ビールを買って飲むよりも満足度が高いよ」と、普段ビールやワインなどを飲む層からの流入を見込むだけではなく、ストロング系の安売り競争から距離を置こうとしている見方もできる。 同社は未来のレモンサワーを主軸として、2025年までに2022年比1.5倍以上となる600億円の売上高を目指している。アサヒビールの反撃が始まった。 ■一時的にはやっても、「定着」するのは難しい とはいえ、この脱安値化という戦略がうまくいくかはわからない。今は物珍しさ的に売れ行きがいいのだが、レモンサワー市場はもはやラインナップが確立されたビールよりもレッドオーシャンであり、突如として販売終了になる商品もたびたびある。そんななか、他製品よりも高めに設定された未来のレモンサワーが吉と出るか、凶と出るかというと、筆者は後者ではないかと思う。