地方創生✕Web.3は、日本再生の切り札となるか──自治体間の “ゼロサムゲーム” に陥らないために【2025年始特集】
ワクワクするような方向性
石破内閣が政権の柱として掲げる「地方創生」。2025年はさまざまな取り組みが伝えられるだろう。だが、1つの疑問が浮かぶ。例えば、地方創生を目的にスタートした「ふるさと納税」では、大きな人気を集めて税収を確保できている自治体とそうではない自治体の格差が生まれている。「地方創生2.0」は、全国の自治体が都市部の人口を取り合って、争うようなことにならないだろうか。そうした動きも含めて、活性化と呼ぶことができるかもしれないが。 青山氏も「人口減少社会において、新しい地域経営の形は何かという問いが常にある。自治体同士で人の取り合いをしていると、ゼロサムゲームでしかない。そうではない仕組み、新しい考え方を生み出さない限りは不毛な戦いになる」と述べた。ただ、この懸念は、まだ先の話かもしれない。地域創生、地域活性化は日本が抱える緊急課題だ。 もう1つ、大きな問題がある。住民と関係人口の間の温度差だ。海士町の場合は、そこに移住者も加わる。高齢化が進む住民にNFTやDAOについて理解してもらうことは難しい。ブロックチェーン、Web3など、難解な用語が並ぶ。 「地域住民はそもそも現状は、Web3やDAOやデジタルを積極的に求めているわけではない。地方は経済的所得は都市部と比較すると高くないかもしれないが、ウェルビーイングが高く、地方だからこその豊さがある。都市の論理を持ち込んで、変化を求めても難しいのではないか」と青山氏は指摘する。 「海士町は20年前に財政破綻寸前となって以降、官民が協力しながら、島内外の海士町を応援してくださる方々と島民とが一丸となって、地方創生に向けたたくさんの挑戦や失敗を経験してきた。これまでの20数年間の中でたくさんのことにチャレンジしてきたからこそ、これからは危機感などを軸とした頑張り方ではなく、ワクワクできるような方向性を示すことが大切だと考えている」 だからこそ、海士町で取り組む「Amanowa DAO」では、クエストを通じて、「大人の島留学生」と「オフィシャルアンバサダー」との共創が促進され、それによって地域に新しい価値が生まれ続けるような “共創型DAO” を目指しているという。 共創型DAOのより具体的な姿について青山氏は「Amanowa DAOは単なるデジタルコミュニティで留まるのではなく、DAOメンバーの活動が現実の地域経営に反映されてこそ意味があるのではないかと考えている。現実の地域社会に新しい風を起こすことができたときに初めて、関係人口やデジタル、AmanowaDAOは、地域住民や社会にとって、価値を感じられるものになるのではないか。だからこそ、私たちは海士町で『大人の島留学生』というある意味、最長で1年しかいない若者たちとその卒業生、お金を払ってでも海士町に関わりたいというアンバサダーとが共創する仕組みにこだわって新しい価値を作っていきたい」と語った。 |インタビュー・文:増田隆幸|トップ画像:海士町の風景(提供:島前ふるさと魅力化財団) |撮影:多田圭佑 【2025年始特集】インデックス“となりのWeb3”、日常に浸透する「夏」がやってきた【2025年始特集】一覧
CoinDesk Japan 編集部