地方創生✕Web.3は、日本再生の切り札となるか──自治体間の “ゼロサムゲーム” に陥らないために【2025年始特集】
トークン(=資金)との向き合い方
AMAコインはデジタル地域ポイントであり、法定通貨に換金できない。利益目的のDAOへの参加を防ぐためだ。 前述のDAOルールメイクハッカソンを契機に、合同会社型DAOの設立・運営についての環境整備が進み、DAOによるトークン発行が可能になった。だが、投資に対して出資額以上の配当を渡すことは制限されている。 地域活性化の取り組みに賛同して出資する人に、出資以上のリターンを出せないことは、ある意味、地域への資金流入を阻害することにつながる。この点について、平デジタル大臣はCoinDesk JAPANのインタビューに「まだ過渡的な対応」であり、「最終的には『DAO法』のような包括的な法律を作って、DAOを運営しやすくすることが必要だろう」と答えている。 AMAコインがポイントであり、法定通貨と換金できないことは、資金流入をさらに狭めてしまうことになりかねないが、そこには理由がある。海士町は「大人の島留学」と並行して「オフィシャルアンバサダー制度」を展開している。 通常、地域をPRするアンバサダーは、その活動に対して、地域が何らかの対価を支払うことが通例だが、海士町の場合は、オフィシャルアンバサダーになりたい人がお金を支払う。1万円、3万円、10万円の3つのプランがあり、宿泊、釣具レンタル、EVスクーター貸し出しなどの特典があるものの、地方創生のトップランナー、高校魅力化プロジェクトなどで関心を集めている海士町ならでは取り組みと言えるだろう。 オフィシャルアンバサダーからの収益の一部は、「Amanowa DAO」アプリのクエストを通した地域の課題解決に充てられる。町を盛り上げるための資金の使い道をDAOの中で決め、多くのクエストをクリアして多くのAMAコインを持っている人は、町への貢献度が高い人と位置づけられ、意思決定により強く関与することができる。 「稼ぐためにDAOに入るようなことはないようにした。だが、資金を積み立てて、どう活用するかをDAOで考えて、現実世界の課題解決とつなげるという両方の仕組みが回っているからこそ、両方が盛り上がるのではないかと考えている」と青山氏は述べた。