紙好きに刺さる!兵庫で「戦後西ドイツ」のデザイン展 約50年前・ミュンヘン五輪の貴重な作品も
■ ミュンヘン五輪のデザインにシビれる
いまだに街を歩けば展覧会やライブなどのフライヤー類、いわゆる紙ものを持ち帰ってしまうタイプの人間にとって、現在「西宮市大谷記念美術館」(兵庫県西宮市)で開催中の『戦後 西ドイツのグラフィックデザイン展』はよだれの出るような展覧会だった。 【写真】1959年創刊、再評価されている『twen』も展示中 展覧会タイトルどおり、戦後からドイツ統一の1990年までの西ドイツのグラフィック表現を集めた同展。一見、鑑賞者にとっての接点を見出しづらいテーマかもしれないが、紹介されているのは歴史的な資料というよりは、現代にも通じるようなヴィヴィッドなグラフィック揃い。約130点のポスターを中心に、小冊子や雑誌、切手、フライヤーなども約250点を見ることができる。 同館の学芸員の下村朝香さんが実際にドイツを訪ねて、グラフィックデザイナーで研究者でもあるイェンス・ミュラー氏のコレクションを確認、日本に持ってきたという形の展覧会となっている。
展覧会の冒頭はドイツデザインへの導入的な内容で、「ルフトハンザ航空」のような見知ったロゴも紹介されているのだが、のっけから驚かされるのが1972年の「オリンピック」にまつわるデザイン物一式。ポスターからさまざまなパンフレット、各競技のピクトグラムまで、シャープなデザインワークを見ることができる。 ミュンヘン・オリンピックのデザインをディレクションした人物、オトル・アイヒャーはその後、自身が事務所を構えたドイツ南部の小さな街のブランディングプロジェクトにも関わったそうで、「当初は物議を醸したビジュアルであったが、その先鋭的なデザインは現在にも通用し・・・広く親しまれている」という顛末も興味深いものだった。 展覧会全体としては、年代順や作家別の展示ではなく、「幾何学的抽象」「イラストレーション」「写真」「タイポグラフィ」というデザイン要素別の章立てで、その中にいくつかの小トピックが組み込まれている。 たとえば、「キール ウィーク」の話。現在も開催されている世界最大規模のセーリングのフェスティバルだが、これがヨーロッパ中に知られたデザインコンペともなっていて、実際、展示されている数々のデザイン物は質の高いものばかりだった。