紙好きに刺さる!兵庫で「戦後西ドイツ」のデザイン展 約50年前・ミュンヘン五輪の貴重な作品も
■ 今なおクール、映画ポスターも数多く
4章立ての構成のうち、個人的にとても惹かれたのが、写真を積極的に使ったデザインを紹介するところ。フォトモンタージュのような芸術写真などの影響もあって、とても意欲的で実験的だと感じられるデザインをいくつも見ることができた。現代のポスター表現ではあまり目にしない、フレッシュな写真活用ぶりが今の目で見てとても新鮮だった。 そして、展覧会を丁寧に見ていると、何度も目にするひとりのデザイナーの名前に気付く。ハンス・ヒルマン。ドイツを代表するデザイナーにしてイラストレーターで、とりわけ、数々の映画ポスターはそのすべてがアイデア豊かで見飽きない。出品された作品点数も多い。 そもそも今回の展示は、冒頭に説明したようにイェンス・ミュラー氏の1万点を超える「A5コレクション・デュッセルドルフ」がもとになっていて、パブリックなコレクションというよりも、ミュラー氏が仕事をする中で集まってきたもの、集めた個人的なアーカイブで構成されている。ミュラー氏の趣味嗜好とまでは言えないかもしれないが、彼の仕事部屋にお邪魔してコレクションを拝見しているような親密さもどこか感じられる。
最後の部屋では、そんなイェンス・ミュラー氏へのインタビュー映像も上映。そこで目にするミュラー氏が想像以上の若さ(1982年生まれ)だったのはさておき、実際に出会った何人かのデザイナーとの思い出も紹介されていた。80代のハンス・ヒルマンに25歳で出会って意気投合したなんてイイ話もあって、根っからのデザイン好きって感じだ、ミュラー氏。 「西宮市大谷記念美術館」では1~2年に一度のペースで開催されるデザイン系の展覧会。なんといっても、この美術館には今竹七郎のコレクションがあるのだ。今回も常設展示室には今竹七郎のデザイン作品が並び、企画展で目にした西ドイツデザインと見比べてみる楽しみもあり。 取材・文・写真/竹内厚