食べ物を制限せずに健康になれる、「直感的な食事法」と「マインドフルな食事法」とは
体重や血糖値の低さ、うつやストレスの少なさに関連、体の声と五感を重視
「直感的な食事法」と「マインドフルな食事法」。これらは、テーブルの上にある食べ物よりも、むしろわれわれの心を重視するという、最新のコンセプトに基づく健康的な食事法だ。体重管理に注目するのではなく、自分の食べ物の選択や、体が発する空腹感や満腹感のサインを信じるよう促す。そうした食事法が、体と心の両方に幅広い健康上の利益をもたらすことを、多くの研究が示している。 ギャラリー:「病気を生む顔」になる食べ物とは 画像5点 2024年8月に学術誌「Appetite」に発表された研究によると、これらの食事法は、BMI(体格指数)の低下、食生活の改善、活動量の増加と関連していることがわかったという。また、摂食障害やうつ病の症状の軽減、ボディイメージ(自分自身の体に関するイメージ、身体像)や自己への思いやりの向上とも関連していた。さらに、直感的な食事は、果物や野菜の摂取量の増加とも関係があった。 では、これらは具体的にどういった食事法なのだろうか。 2つの食事法には多くの共通点がある一方、重要な違いもある。直感的な食事法で重視されるのは、いつ、何を、どのくらい食べるのかを決めるときに、体に生まれつき備わっている空腹や満腹のサインに信頼を置くことだ。マインドフルな食事法では、ゆっくりと、すべての感覚を使って、食べるという行為に意識を集中することが求められる。 どちらの食事法も、ポジティブで快適かつ柔軟に、エネルギーとスタミナの源となる栄養豊富な食事を存分に楽しむことを学ぶ助けとなると、世界的に著名な栄養士エリン・サッター氏は述べている。 どちらか一方を選ぶ必要はない。直感的な食事法とマインドフルな食事法は、うまく組み合わせることが可能だ。それぞれの利点と、どのように始めればよいかについて知っておきたいことを以下にまとめた。
直感的な食事法の利点
直感的な食事法という言葉は、1995年に栄養士のイブリン・トリボレ氏とエリース・レッシュ氏によって考案された。 この食事法の10の原則では、ダイエット文化や他者からの外的なメッセージを聞くのをやめ、自分の空腹感や満腹感のサインに耳を傾けるよう促している。そうすることで、自分の好きな食べ物を、満腹になるまでではなく、満足するまで食べて、自分の食事のしかたに前向きな気持ちを保てるようになる。 10の原則はまた、体を動かしたときの感覚を楽しみ、自分の体を尊重することの大切さにも重点を置いている。 興味深いことに、研究では、直感的な食事法とポジティブなボディイメージを持つことの間には、互いにプラスの関係があることが示唆されている。つまり、直感的な食事法はポジティブなボディイメージを育み、その逆もまた真だということだ。 メリットはそれだけにとどまらない。2022年に学術誌「American Journal of Health Promotion」に掲載された研究では、直感的な食事法の評価で高得点を取った女性は、ほかの食事スタイルの人々と比べて、心理的苦痛が少なく、BMIが低く、病的な食事パターンを持つ傾向も低いことが示されている。 また、1491人の参加者を8年間追跡調査した研究によると、直感的な食事法は、うつ症状、自尊心にまつわる問題、ボディイメージへの不満を抱えるリスクの低下と関連しているという。 「直感的な食事法は、繰り返されるダイエットや食事を縛るルールからの解放をもたらします」と語るのは、米コネティカット州で活動する臨床心理士レイチェル・マーシャル氏だ。 「自分の体が発するサインやニーズに敏感になり、それによって自分への信頼を築いたり自分の体を受け入れたりできるようになります。直感的な食事法の実践は、食をより楽しむことや、食に関するストレスや不安の軽減につながります」と氏は話す。 直感的な食事法にはどうやら、世代を超えて受け継がれる要素もあるようだ。2024年8月に学術誌「Appetite」に掲載された別の研究からは、母親が直感的な食事法を実践している場合、成人した娘も同様の習慣を身につけている割合が高いことがわかっている。そうした母娘はまた、体重を減らすことを目的とした食事をしている母娘と比べて、優れた心身の健康を保つ傾向にある。