居酒屋がサイコロの出目次第で客に特典を与えるサービスを実施しても損はしない理由
「お得」を目指しゲーム感覚で楽しむ
振ったサイコロの出目によって特典が変わるゲーム感覚のサービスが人気を集めている。自らの腕と運をかけて、よりよい結果を求める「勝負」に、仕事帰りの会社員らもはまっているようだ。 昨年11月下旬の夜、東京都中央区の居酒屋チェーン「串カツ田中」小伝馬町店で、店員が洋鈴を鳴らして、飲食を楽しんでいた会社員3人のテーブルに近づいた。差し出したのはサイコロ2個が入った丼だ。 さっそく、会社員の男性一人が丼の中でサイコロを振ると、「5」「5」のゾロ目。頼んだハイボールが無料になり、満面の笑みでガッツポーズをとった。3人は店に来るたびに挑戦しているそうで、「お得だし飲み会が盛り上がる」と話す。 同チェーンを運営する串カツ田中ホールディングスが全国337店舗で展開するサービス「チンチロリンドリンク」。サイコロの出目次第で、注文した飲料1杯の料金や量が変わり、出た目が同じゾロ目なら倍量や1杯分が「無料」、偶数なら「半額」、奇数なら「量も金額も倍」になる。奇数でも1杯あたりの金額は変わらず、客が損はしないサービスといえる。 「店員や客のコミュニケーションが弾み、店内の活気づくりに役立っている」と、同社の広報担当、徳留達也さん。会社員だけでなく家族連れにも人気という。 昨年11月にオープンした東京都新宿区の居酒屋も、サイコロの出目によるドリンクサービスを導入した。サイコロを三つ使用し、出目が「4」「5」「6」なら通常の倍の量が無料、すべて偶数なら半額などになる。ただ、サイコロの数が多い分、「狙った特典を得るのが難しい」との声も。 居酒屋を中心に広がるサイコロを使った飲食サービスは10年ほど前、東京都内の大衆酒場が販売促進などを目的に始めたとされる。その後、他店が同様のルールや特典を設けて追随。業界の定番企画となった。 飲食業界のサービスに詳しい、中小企業診断士で作る「飲食業界研究会」メンバーの山田聡さん(34)は「客はギャンブルと違って無駄に金を払うことなく、値段相応の対価を得られる。自分の手で運命を決めるワクワク感や面白さ、エンタメ(娯楽)的な要素が受けている」という。