居酒屋がサイコロの出目次第で客に特典を与えるサービスを実施しても損はしない理由
店も客も条件次第で「お得」に
店は損をしないのか? 数学ライターで、現役の東京大学生の永田耕作さん(23)は「条件付きだが、客も店もどちらにとっても得になる、よく考えられたサービスです」という。 たとえば、サイコロ2個を使った、串カツ田中と同様の特典付きサービスを想定。永田さんによると、サイコロ2個の出目の確率は、ゾロ目が6分の1、偶数(ゾロ目を除く)が3分の1、奇数が2分の1だ。これを基に、1杯400円の飲料の期待値を計算した場合、「0×1/6+200×1/3+400×1/2=約267円」で、通常の値段を下回る。 一方、店側にとっても、1回の注文あたりの期待値は「0×1/6+200×1/3+800×1/2=約467円」で、サービスを実施した方が多くなる。 「サービスが続いているのには、理由がある。ただ、こんな理屈ばかり考えていても興ざめするので、単純に『お得』を目指して楽しむとよいでしょう」と話している。
旅行の行き先をサイコロで
居酒屋以外でも、「サイコロ」を使ったサービスがある。 JR西日本が2022年7月からウェブサイトで不定期発売する「サイコロきっぷ」では、デジタルのサイコロを振り行き先を決める。 昨年9月に発売された第7弾の出目(行き先)は、「富山」「津山」「白浜」「博多」の4か所。価格は大阪市内の駅との往復運賃と、訪問先の観光施設の割引特典などを含め、大人1人5000~8000円で、用意した約2.5万組が完売した。 同社広報担当の山口卓哉さんは「予想以上の売れ行き。未知の土地を訪ねるきっかけになったなどと好評だった」と話す。 情報サービス会社「Agoop(アグープ)」の歩数計アプリ「アルコイン」は2023年8月、約500歩ごとにサイコロを振りポイントを増やせるサービスを始めた。ポイントは電子ギフト券などと交換できる。ダウンロード数は約220万に上るという。 ◇ 運試し程度に挑戦していた居酒屋のサイコロ。奥深さを知り、これまで以上に楽しめそうな気がする。(読売新聞生活部 岩浅憲史)