「余命1年」身障者4級への行政支援のありがたさ
第1クールの4月から3カ月。全身化学療法と呼ばれる抗がん剤治療による嘔吐、食欲不振、白血球減少、血小板減少、脱毛、間質性肺炎、腎機能低下、末梢神経障害、口内炎といった副作用とはほぼ無縁だった。原発巣の膀胱の腫瘍も悪さはしない。頻尿も血尿もなく順調だ。 第3クール最後の投与日の診察時に主治医がこう提案してきた。 「血液検査の数値は確実に良くなってきています。来週、CT撮影をして(肺への転移状況が)大きく改善しているようなら、抗がん剤の種類を変え、次のステップに進みましょうか」
一気に肺の腫瘍を縮小させてしまおうということなのか。何はともあれ、7月上旬のCT撮影の結果次第ということである。 7月5日、放射線科で受付を済ませ、検査室の前で名前が呼ばれるのを待つ。10分ほどして名前を呼ばれ検査室に入る。検査設備から出る独特の電子機械音がSF的で不気味だ。CT撮影は10分もかからないうちに終了した。さあ、どんな結果が出ているのか。1時間後に診察室ですべてがわかる。 9時半、泌尿器科のロビーで名前を呼ばれ、診察室に向かう。緊張する。ドアを開け、医師にあいさつすると笑顔が返ってきた。結果が良かったのだろうか。
■CT画像を見比べてみると 「山田さん、肺の腫瘍ですがね、随分小さくなっていましたよ。今、画面を出しますからね」 医師はそういうとパソコンの画面上にCT撮影のモニター画像を映し出した。左右2カ所に肺の画像が映っている。左は4月8日撮影。右は7月5日撮影となっている。まずは左の画面を見よう。中心の骨があるところの左側に大きな白い影がある。緑の数字で直径が記されている。38.70mm。右側の平べったい腫瘍の直径は42.96mmとなっている。
次に3カ月後の画面を見ると、左側の丸っぽかった腫瘍は随分と縮んでいるのがわかる。直径を見ると23.56mmだ。当初の38.7mmの6割まで小さくなった。右側の腫瘍の直径は28.05mmだから、こちらも65%の大きさまで縮小した。 明らかに抗がん剤が効いたのである。 「ここまで効果が出たから、次はこの効果を維持するアベルマブ療法に切り替えましょう。アベルマブ(薬品名はバベンチオ)は免疫チェックポイント阻害薬の一つで、臨床試験の結果では、尿路上皮がんに対する化学療法後の治療効果を、この薬によって持続させることでがんの進行を遅らせる可能性があることが示されています」