あまり報道されない重傷事故の「その後」 被害者の母親と、足切断の男性が語った苦難
裁判では完全勝訴
事故から7年後、水野さんは車の運転手に損害賠償を求める民事裁判を起こした。裁判で運転手は「青信号だった」と主張したが、裁判官は水野さん側の主張を認め、「被告は赤信号無視、時速35キロ以上の速度超過で追突した」と述べた。そして、車の運転手に100%の過失があったという判決を下した。 運転手は控訴したもののすぐにそれを取り下げ、2003年7月に水野さんの勝訴が確定した。 事故から判決までの10年間について、水野さんはこう語った。 「もし、事故の衝撃で私に記憶がなく、目撃者もいなければ、この事故は加害者の説明どおり『バイクの飛び出し』と認定されたでしょう。理不尽な過失割合を覆すことはできなかったはずです」
自ら証拠を集めることも重要
前出の真由さんのケースのように自らの非を認める加害者がいる一方、事故の原因を正直に話さない加害者も存在する。しかし、警察の捜査で真実が明らかになるとは限らない。水野さんのケースのように、加害者の供述を重視し、事故処理が進んでしまうことがある。被害者であっても、警察の調書類は加害者の起訴・不起訴が決まるまで閲覧できないため、結果的にそれに気づくのに数年かかることもある。
長年にわたって交通事故被害者の支援を続け、裁判にも多数関わっている青野渉弁護士は、万一被害者になったら、警察だけに頼らず、自らも客観的な証拠を押さえることが大切だという。 「被害者が受け取る賠償金は過失割合によって大きな影響を受けます。特に重度後遺障害の場合、10%違うだけで、1000万円以上の差が出ます。できるだけ早く信頼できる弁護士に相談し、事故の痕跡が消える前に、独自に現場や事故車の写真等も押さえておくことが大切です。警察には自分の記憶している事故状況を、しっかり伝えてください。最近は性能のいいドライブレコーダーも普及しているので、自分のものはもちろん、加害車側の映像や防犯カメラなども調べてもらうよう要望しましょう」