自公政権のままでも新政権になっても年末には決着しなければならない「税制」の宿題がある
10月27日投開票の衆議院総選挙に向けて、選挙戦の只中である。その選挙結果がどうであれ、2024年は年末までに税制論議が避けられない。 まず、総選挙後も引き続き自公政権が続くとすれば、岸田文雄内閣の下で自民党も公明党も党議決定し、さらに閣議決定した「令和6年度税制改正大綱」のくびきがある 「令和6年度税制改正大綱」では、2023年末に決めきれなかった税制の案件を2024年末までに結論を得ないといけないものがある。
■児童手当の拡充が「所得増税」とならないための措置 1つには、所得税における16~18歳の扶養控除の縮小がある。2024年10月から児童手当が拡充された。所得制限を撤廃した上で、支給対象を中学校卒業までだったのを高校生年代(扶養されている16~18歳)にまで延長した(それと、第3子への給付の増額もある)。 2010年に、所得制限を撤廃して子ども手当を支給することにした際、15歳以下の子に対する扶養控除を全廃した。それは、当時の民主党政権は、「控除から手当へ」をスローガンにしており、所得制限を撤廃した上で、所得税制上の控除ではなく手当によって子育て世帯を支援することとしたためである。
扶養控除をはじめとする所得控除(所得税制では、課税所得を計算する際に課税対象から外すべく控除されるもの)は、同じ控除額でも、所得が多い人ほど税負担軽減額が大きくなる。しかも、所得税の課税最低限以下の所得しか稼いでいない人には、所得控除の恩恵は及ばず、控除が設けられていても1円も手取り所得(可処分所得)は増えない。 他方、手当が支給されれば、所得がいくらであっても、その分だけ手取り所得は増える。扶養控除の形で子育て世帯を支援するより、給付の形で支援したほうが、貧富の差は小さくできる。
それ以来現在に至るまで、15歳以下の子に対する扶養控除は一切ないままとなっている。 そこで、岸田内閣期に決めた前述の児童手当の拡充によって、所得制限を撤廃した上で18歳まで支給することになった。15歳以下までの制度と平仄(ひょうそく)を合わせると、所得制限をなくして手当を支給しているわけだから、所得税制における控除をやめるという対応になる。 ただ、16~18歳の扶養控除を全廃すると、ごく一部の高所得層で、それに伴う所得税の増税額が、児童手当の拡充によって受ける支給額より多くなってしまう(それでも、大半の所得層では給付増が上回る)。