人間の「生々しすぎる」欲望かなえるロボットの実態…!「ヒトの身体を模倣して…」
恋愛の要素を「分解」してみる
「人間の方がロボットよりも恋愛で優れていることはありますか?」。 今回の記事のテーマを身近な学生たちに聞いてみたところ、ロボットの見た目や動きを如何に魅力的に作り込むのか、といった外見や表出などの部分、こちらの心に優しく寄り添う会話をしてくれるか、というコミュニケーションにおける癒し力、さらに性的な欲望を満足させることが可能なレベルで肌などの質感をリアルに再現することは可能か?といった、即物的な部分に注目して技術的な課題や解決策について考察してくれることが多かった。 これらはすべて恋愛における目に見える側面である。 それに対して、一部の学生たちは、目に見えない精神的な部分にフォーカスを絞った恋愛についての様々な興味深い分析や持論を熱く語ってくれた。特に、「波長が合う」、「相性がいい」といった、個体そのものの性質ではなく、個体間の関係性に対する言及が多い印象であった。 このような関係性は恋愛における目に見えない側面である。 もちろん以上の回答は、たまたま自分が質問した学生たちはこうだったという話にすぎないのであるが、しかし、恋愛において、物質的な面を重視する人々と、精神的な面を重視する人々がいるのは確かなようだ。では上に述べたような特徴は、人間しかもてない特権なのであろうか?上記で学生たちとの雑談から出てきた要素について少し深掘りして考えてみたい。
性的満足を与えてくれるロボット?
まず目に見える要素は、目指すべき目標が明白なため、比較的簡単にロボットでも再現できそうである。特に外見や動きなどの部分に関しては、技術発展は著しい。例えば、大阪大学の石黒浩教授は、自分自身の姿を筆頭に、人間と酷似した理想の外見をもつ、さまざまなアンドロイドを制作している。 これらのアンドロイドの研究は、パートナーロボットをつくるという現実的なニーズに答えるものというより、現状では人間とはそもそも何なのか、という哲学的、科学的問いに答えるための探求となっている。また顔表情やジェスチャーの生成に最新の人工知能技術を用いることで、これらのアンドロイドの動作も日々自然で滑らかなものになっている。 また物理的身体に拘らないのであれば、CGアバターなど、現状でもさまざまな魅力的な外見のキャラクタを作成することが可能である。 10年後、20年後には、ますます技術が発達し、自分が理想とする外見や動きをするアンドロイドのようなロボットや人工知能を搭載したCGキャラクタを制作することは決して難しくはなくなっているであろう。 また優しくこちらの心に寄り添う会話というものも、決して人間同士だけの特権ではない。 近年、大規模言語モデルを用いることで、人間のさまざまな悩みに対して、感情的なサポートや、具体的な提案を行うことが可能なロボットが開発されている。 むしろ、人間には感情の揺らぎや疲労が存在し、相手が望むような返答を常に安定して行うことは難しい。しかしロボットにはこのような要素は無く、またロボットは、(あえてそのようなプログラムを事前に載せていない限り)偏見や思い込みをもって人間に接することもないため、何も忖度することなく、のびのび会話を行うことができる。 現に、コロナ禍の2020年に行われた11か国に渡る一万人以上を対象としたある国際調査では、82%以上の人が、人間よりもロボットの方がメンタルヘルスをうまく支援してくれる、と回答した。もちろん、調査を行う対象や質問内容に応じて、このような結果は大きく変わるので慎重に結果を考察するべきではあるが、すでに多くの人たちが心に寄り添ってくれるロボットの価値に気づき始めているのかもしれない。 また恋愛感情にとって大切な要素の一つである性欲についても、人間のリアルな身体を模倣したセクサロイドというロボットがいる。 これらのロボットは人間に性的なサービスを行うことを目的としたものであり、もともとはサイエンスフィクションの中に登場する存在であった。しかし近年のロボット技術の進歩により、さまざまな優れた機能を有したセクサロイドが、現実のロボットとして次々と現実化しつつある。 これらのロボットには、近年コミュニケーションなどの機能も実装され、人間の性的な欲望を満たすため、日々開発者たちが情熱をもって開発に奮闘をしている。このような技術が進歩していくことで、人間同士と同様の、もしくはそれ以上の性的満足を与えてくれるロボットが登場する未来もそう遠くないのかもしれない。 >>つづく「山下達郎的「一人きりのクリスマスイブ」もはや「ありえない」…!ロボットから考える「マチアプ」恋愛「うまくいく人」「いかない人」の意外すぎる特徴」では、恋愛の「目に見えない」要素がロボットに実装できるかについて、丁寧に検証していきます。
高橋 英之(大阪大学大学院基礎工学研究科システム創成専攻知能ロボット学研究室(石黒研)特任准教授)