あの校長が神戸市教育長に、気になる改革の中身 教員出身者は68年ぶり、教育長・福本靖に聞く
「前例を踏襲せずに、変えるべきものは変えていく」
2022年3月まで神戸市内の公立中学校で校長を務めた福本靖氏は、PTAの見直しやデジタル採点システムの導入、通知表の所見欄の廃止など、数々の改革を行ってきた。定年退職後は2年間、兵庫県川西市教育委員会で働き方改革などに取り組み、2024年4月に神戸市教育委員会に呼び戻され、教育長に就任。神戸市で教員出身者が教育長になるのは68年ぶりのことだ。改革者として知られる福本氏は、神戸市の教育長として今後はどのような取り組みに注力していくのだろうか。 【写真】今年度からすべての小中学校で「校内サポートルーム」を整備 福本靖氏は、神戸市立本多聞中学校と桃山台中学校で校長を務めた際、PTAの不要な活動を廃止した一方で、月に1回、保護者と校長・管理職が自由な意見交換を行う運営委員会を開催するなど、保護者参画型の学校運営を進めてきた(福本氏の改革の詳細はこちらの記事を参照)。 そして、定年退職後の2022年4月、改革の実績を買われスカウトされる形で川西市教育委員会に採用された。1年目は働き方改革を担当し、2年目は市内の学校現場全体を統括する役割を務めた。 着任当初は、川西市の公立学校には教員の勤怠管理のためのカードリーダーが設置されておらず、「働き方改革がこれだけ議論されているのに、教員の勤務実績を電子記録として残していないことに驚いた」と福本氏。すぐにカードリーダーを導入したが、「そのほかにも、『今まではこのやり方でやってきたから』という前例踏襲によって改革が進んでいないと思われる状況が多々あった」と福本氏は話す。 そこでまず行ったのが、校長の意識改革だ。各校の状況に合わせた取り組みを教育委員会としても支援していく姿勢を示した。すると、校長がリーダーシップを発揮して学校改革に着手する動きが出てきたという。 例えば、川西市立多田小学校の校長・西門隆博氏は、1学年を複数の教員で受け持つ「学年担任制」と「教科担任制」を導入。さらに、授業時間を1コマ45分から40分に短縮し、午前中に5時間授業を行うことで下校時刻を早めた。 事前に西門氏より相談を受けた福本氏は、改革によって生じる課題に対して1つひとつ寄り添い、サポートした。とくに「保護者には書面の報告で済ませるのではなく、なぜその取り組みをしたいのかについて説明責任を果たすこと」は強調して助言したという。 チームで子どもたちを見ることができるこの体制によって、自信を持てずにいた若手教員が前向きな気持ちになれたという変化も見られたそうだ。また、下校時刻が早くなったため、教員が午後に部分休業を取得しやすくなったという。この改革は児童・保護者にもおおむね好評で、アンケート調査では「いろいろな先生と関わることができてよい」とする回答が多く見られた。 川西市では多田小学校の取り組みを参考に学年担任制や教科担任制を取り入れる小学校もあり、「前例を踏襲せずに、変えたほうがよいと思われるものは変えていく」という福本氏の目指す改革が徐々に広がっていったという。