あの校長が神戸市教育長に、気になる改革の中身 教員出身者は68年ぶり、教育長・福本靖に聞く
「働き方改革」は量的ではなく質的に見る必要がある
神戸市では、学校給食費の公会計化など、教員の負担を減らす施策も実行しているが、教員の働き方改革に関しては「量的ではなく質的に見ることが重要」だと福本氏は話す。 「勤務時間は以前より短くなっていても、休職・退職に至った若手教員へのアンケートでは、保護者対応も含めた人間関係のプレッシャーが苦しかったという声が多く見られます。1990年代後半ごろから、子どもが抱える問題や保護者の価値観が多様化し、『丁寧な指導』という名の下に個別のクレームや要求に学校が対応しなければならなくなった。その結果、教員が過剰なサービスを引き受けすぎて疲弊してしまっているように思います」 この現状を変えるために福本氏が提案するのが、学校が抱える課題を保護者や地域の人々も含めた「みんなの課題」として共有していくことだ。 「保護者と校長や管理職がフランクに懇談できる機会を定期的に設けて、各自が気になっていることを自由に言ってもらえるようにすれば、そこで語られたことは『みんなの課題』となり、誰が対応してもよいことになる。学校が抱える課題を、職員室の中だけで悩む必要はありません。保護者や地域の人々に開かれた学校にすることで、結果的に教員の負担を減らせるはずです」 開かれた学校を実現するために、福本氏は神戸市の公立学校の校長を集めた場で「あなたたちが変わらなければ神戸市の教育は変わらない」というメッセージを発信。校長のリーダーシップの下で各学校が改革に取り組むことの重要性を伝えたという。 「現役の校長の中には、私が中学校で校長を務めていた当時のPTA改革などの取り組みを知っている人も多い。単独でいろいろなことを変えてきた教員出身の私が教育長になったので、『あの先輩が言うならやるしかないか』『自分もやれるかな』と思ってもらいやすい面もあるのではないでしょうか。今後も校長1人ひとりの挑戦を否定せずに支援することで、各校の取り組みを後押ししていきたいと考えています」 (文:安永美穂、写真:神戸市教育委員会提供) 関連記事 「PTA改革で注目の元校長『保護者なしに働き方改革は実現しない』と語る訳」
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