あの校長が神戸市教育長に、気になる改革の中身 教員出身者は68年ぶり、教育長・福本靖に聞く
「CSの活性化」や「部活動の地域移行」で開かれた学校へ
川西市教育委員会での2年間の勤務を経て、神戸市に呼び戻される形で2024年4月に教育長に就任した福本氏。「教員の働き方改革や教育改革を進めるには、保護者や地域の人々を巻き込む学校運営が不可欠」との考えから、コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度、以下CS)の活性化や中学校部活動の地域移行といった、地域に開かれた学校づくりに意欲を見せる。 神戸市では2022年にすべての小・中学校に学校運営協議会が設置されており、保護者と地域の人々が協力して小学1年生の集団下校の見守りをしたり、地域のNPO法人がボランティアを募って放課後学習支援を実施したりといった実践を行う学校もある。 「PTAに代わり、地域が主体となるCSの枠組みを活用することで、より多くの地域の方々の力を借りながら学校運営を行うことが可能になります。CSは学校が核となることで地域活動の活性化につながる取り組みでもあり、学校運営の1つの手法として根付かせていきたい」と、福本氏はCSのさらなる活性化を図る意向だ。 中学校の部活動については、2026年9月に平日・休日ともに地域に完全移行する方針を打ち出した。新たな地域クラブ活動「KOBE◆KATSU(コベカツ)」は、地域のスポーツ団体などが主体となり、学校施設や地域の施設を活用しながら、地域の指導者や希望する教員が指導を行う。活動は会費制で、生徒は校区を超えて自分のやりたい活動に取り組めるようになる。 福本氏は、部活動の地域移行を「地域の中学生が放課後や休日にスポーツや文化活動に親しめるように、社会全体として何ができるかが問われる問題。いわば社会移行」と捉え、「市民の皆様の力を広く求めることで、平日も含めた地域移行を進めていきたい」と意気込む。 また、地域に開かれた学校づくりと並行して福本氏が重視しているのが、すべての子どもの学びを保障するための取り組みだ。 不登校支援の取り組みとしては、今年度からすべての小中学校において、自分の学級に入りづらい児童生徒が自分のペースで学習・生活できる「校内サポートルーム」を整備し、支援員を配置している。「柔軟に子どもたちに対応できる学校文化に変えていくという狙いもある」と福本氏は言う。 2024年7月の時点で支援員が配置されていた240校では、1日当たり250名程度の児童生徒が利用し、1日11名の利用があった学校もある。支援員は各校長が任用するが、適切な人材が見つからない場合は神戸市教委が人材の紹介を行っており、不登校の子どもを育てた経験のある人が支援員を務めているケースもあるという。 このほか、不登校支援としては、「来年4月に学びの多様化学校を開校する予定。適応指導教室の充実や、フリースクールとの連携も強化し、子どもが安心して選べる選択肢を増やしていきたい」と福本氏は話す。 増加傾向にある外国人児童生徒への支援も拡充し、2024年度より、日本に来たばかりの児童生徒が集中的に学べる「日本語ひろば(初期日本語指導教室)」を開設。1クール11日間(33時間)、年間11クールの実施を予定している。 また、2024年5月より、授業通訳支援ツール「ポケトークforスクール」を導入。これは授業中に教員が話す内容をそれぞれの児童生徒の母語に同時通訳して学習用パソコンに表示するツールで、学校での導入は全国の自治体初の試みとなる。 多くの自治体で課題となっている教員の人材確保については、採用選考時の負担を減らすことで教職を志す学生を増やそうと、2025年度の採用選考より「大学3年生等早期チャレンジ選考」を開始。1次試験に合格すれば次年度の1次試験が免除され、教育実習や民間企業の就職活動との両立がしやすくなるこの選考枠には193名の応募があった。採用後の事前研修では、指導案づくりのポイントなど勤務開始後にすぐ役立つ内容も扱い、着任を安心して迎えられるように配慮しているという。