北陸新幹線「米原1兆円 vs 小浜5兆円」 そろそろ東京側の二重系も視野に入れた「フェアな議論」が求められるワケ
高架橋の柱から出る謎の出っ張り
大宮駅付近はどのように計画されていたのだろうか。 資料を調べたり、実際に現地に行ってみたりすると、新宿延伸のための準備工事が至るところで行われていることがわかる。 「東北新幹線工事誌(上野大宮間)」によると、大宮駅の南側の高架橋では、現在線の西側に2線分の腹付線を増設し、場所によっては複線の両側に腹付線を増設して複々線化する計画があったようだ。 実際に現地の線路を見ても、複々線用のスペースを確保するための広い高架橋部分や、複線高架部分の両側にさらに1線ずつ追加できる構造物が見受けられる。 高架橋の柱に横方向に柱や梁(はり)を追加できるような出っ張りがある部分が目印だ。また、車窓から見ると、複線分の高架橋にしては不自然に幅が広くなる箇所があることに気付くだろう。
平面交差防止の仕組み
大宮駅の北側、東北・上越新幹線の分岐点までの区間には、各方向からの出入線が平面交差しないように配線の準備がされているのがわかる。 具体的には、次のような組み合わせで同時に出入線しても交差しないような配線が計画されていたようだ。 ・東北 ⇔ 東京と上越 ⇔ 新宿 ・東北 ⇔ 新宿と上越 ⇔ 東京 この配線構造は、東京メトロ有楽町線・副都心線の小竹向原~千川間に似たものだ。 「東北新幹線工事誌(上野大宮間)」によると、大宮を出ると、まず上下線の高架橋の間に間隔が開くところがある。現在の鉄道博物館付近だが、ここでは地上に1本線路を下ろすための分岐が作られる予定だったようで、これは関係ない。 さらに進むと、下り線の上越新幹線と東北新幹線の間に、1本の高架橋線路を挟めるだけのスペースが確保されているのが見える。これはニューシャトルの吉野原駅付近数百mに渡って確認できる。 また、ニューシャトルの吉野原~沼南間には、高架橋の両側に単線ずつ高架橋を追加できる用地が確保されており、図面から見ると、この部分に平面交差を防ぐための高架橋が作られる予定だったようだ。その高架橋は、ニューシャトルの丸山駅付近で合流させるように図面上は見える。 上越新幹線側では、ニューシャトル丸山駅の幅が広いため、高架橋の柱が外側にはみ出している部分があり、これは合流部に適していると思われる。一方、東北新幹線側には同様の準備工事は見られない。 上り線の高架橋について、丸山駅付近から平面交差防止用の高架橋を分岐させた場合、その先の吉野原駅付近まで、ニューシャトルの線路が邪魔して合流できるスペースがない。この点をニューシャトルの建設時に考慮していなかったのだろうか。 また、元の図面では、上りの平面交差防止用高架橋は上越新幹線上りの単線高架をくぐる構造になっているが、高架橋の柱の配置を見ると、単線高架を通過させるために設計されたとは思えないほど柱間隔が短い。そのため、もし今から作る場合は、上越新幹線上り高架橋との合流前に分岐させる必要があるだろう。
新幹線整備の課題と解決策
いかがだっただろうか。 このように、新幹線の大宮~都内間の区間を二重系化するための準備が進められていたことが明らかになった。 しかし、今から実現しようとすれば、すでに使用できなくなった用地や支障移転が必要な物件が多く、さまざまな困難が予想される。 また、現在も沿線環境や線形の問題から、東京~大宮間のように130km制限を課すことは避けたいだろう。そのため、騒音トラブルを防ぎつつ、直線的なルートで高速走行ができるような解決策が求められる。 そこで、もし今から作るとなると、どのようなルートになるのか、そしてその整備効果はどうなるのかを検討した結果を、次回示す。
北村幸太郎(鉄道ジャーナリスト)