北陸新幹線「米原1兆円 vs 小浜5兆円」 そろそろ東京側の二重系も視野に入れた「フェアな議論」が求められるワケ
線路として全通していない上越新幹線
では、東北新幹線と線路を共用している東京側をどのように二重系化するのか。 実は、東北・上越新幹線の建設時に、国鉄はこの点について考えていなかったわけではない。 上越新幹線の線路はまだ全通していない。確かに列車は東京駅まで乗り入れているが、それは大宮~東京間で東北新幹線の線路を 「間借りしている」 にすぎない。上越新幹線は東京都~新潟市間をつなげる計画で着工されたが、大宮~東京間は一部の準備工事を除いて、実際にはほとんど手を付けられていない状態だ。
新宿が本当の終点だった上越・北陸新幹線
では、上越新幹線の本当の終点はどこなのか――。 実は、国鉄時代の資料「新宿駅貨物敷活用基本構想」(国鉄新宿駅貨物敷活用基本構想研究委員会)によると、新宿駅がその終点として計画されていた。新宿駅には現在の1~4番線、埼京線の直下、地下3階に3面6線または2面4線の新幹線駅を設ける予定だった。駅の終端部分は代々木駅に達し、そこにも新幹線専用の改札を設ける構想だったようだ。そのため、都営新宿線の駅位置が西側に寄っていたり、駅東側が急な下り坂になっていたりする。 『トンネルと地下1978年3月号・新宿駅線群の下を抜く 地下鉄10号線シールド』(日本国有鉄道東京第三工事局新宿工事区 田中逸男区長・吉永則雄助役)によれば、都営新宿線のトンネルは 「新幹線の新宿乗り入れなどの将来構想を考慮して32‰の急勾配で下り、貨物線(現・埼京線)の下に至る」 と記載されている。また、新幹線駅を設置予定の空間部分には補強用の薬液注入が行われていないなど、工法が異なっている。 さらに大林組のウェブサイトによると、バスタを建設する際に新宿駅地下に機械室が設置された。この地下設備は、埼京線直下の地下1~2階程度の深さに作られ、新幹線駅のコンコースや機械室が設置される予定の空間が活用されている。将来的には、この地下設備がコンコースとして転用される可能性もあり、新幹線駅設置に向けた準備工事ともいえるだろう。 一方で、地下設備とは別に埋め込まれたくいは埼京線直下に多く、この様子から新幹線駅はバスタより北側で建設されるか、または中央線直下の広い間隔のくいの間に建設される可能性が高い。 現在、直接的な建設計画はないが、政治的な判断や社会情勢の変化により、新幹線駅が実現する可能性はゼロではない。例えば、東北新幹線の上野東京ラインの神田駅付近では、地元の反対にもかかわらず、後に新幹線直上に柱を立てられるように準備工事をしていたため、後に重層構造が実現した。 特に、今から新幹線駅を作る場合、JRの出費は開業後の線路使用料だけで済む。最近、財務省がターミナル駅建設費の一部をJRに負担させようと提案しているのが気になるが、上越・北陸新幹線の新宿延伸については大物政治家が度々取り上げているため、JRも無視できないだろう。