「プーチン支持率8割」にはカラクリがある…戦場に行きたくないロシア人がプーチンを支持する本当の理由
■「軍事作戦」への支持率は高い水準のまま とはいえ、プーチン氏や国営メディアが繰り返し強調している今回の「軍事作戦」をめぐる大きな構図自体は、ロシアの社会に受け入れられていると言ってよい。 レバダセンターのヴォルコフ所長によると、「ウクライナに住むロシア語話者がウクライナの政権から迫害されている」とか「危機を起こしたのは米国やNATOであり、ロシアは防御的な対応を迫られたに過ぎない」といった政権の説明は、ロシア国内で広く信じられている。 そして侵攻開始後、国営メディアへの信頼度は、むしろ高まる傾向にあるのだという。24年3月にモスクワ郊外のコンサートホールで起きたテロ事件をめぐって、背後にウクライナがいるという政権の主張を受け入れる人が多いことは本書の第1章で見た通りだ。 こうした状況は、「軍事作戦」そのものへの支持率にも表れている。開戦から2年を経た24年3月の調査では、軍事作戦を「完全に支持する」または「どちらかといえば支持する」人は計76%で、22年3月の80%とほぼ変わらない水準を維持している。 もうひとつ興味深いのは、レバダセンターがウクライナ南部のヘルソン州とザポリージャ州について22年8月に行った調査だ。両州は、侵攻開始後わずかな期間に多くの領域をロシア軍に占領された。ロシア側は被占領地の住民にロシア国籍を付与したり、学校でロシア式の教育を進めたりといった「ロシア化」政策を進めている。 ■無自覚なウクライナへの“上から目線” さらに22年9月、ロシアはこの両州のロシアへの併合を一方的に宣言してしまう。その1カ月前に行われた調査では、ヘルソン州とザポリージャ州の将来像について質問していた。その結果は以下のようなものだった。 ---------- ロシアの一部となるべきだ45% 独立国家となるべきだ21% ---------- これに対して、ウクライナの一部にとどまるべきだと答えたのは、わずか14%にとどまった。プーチン氏はかねて、ウクライナは人工的な国家であるとか、ロシアと共にあるからこそ主権を行使できるといった見解を繰り返してきた。前記の調査結果からは、ウクライナを一人前の国家とみなさない考えが、ロシア国民の間で広く共有されている実態が見て取れる。 実際、私がロシア人と話をするとき、ごく自然にウクライナやウクライナ人を見下す発言を聞かされて、居心地が悪い思いをすることが多くあった。 「彼らは一度も自分たちの国を持ったことがないんです」 「私はウクライナに親戚もいるし、彼らのことをよく分かっています。まともに国を運営できるような人たちじゃないんです」 こうした言葉を聞くたびに、私は、一部の日本人がごく自然にアジアの近隣国に対して上から目線で語る場面を思い出さずにはいられなかった。長くロシアに住む日本人から、多くのロシア人と同じような無自覚なウクライナに対する上から目線、あるいは直接的な差別発言を聞くこともあった。ロシア社会に溶け込むうちに、名誉白人ならぬ名誉ロシア人のような感覚を持つに至ったのかもしれない。