「プーチン支持率8割」にはカラクリがある…戦場に行きたくないロシア人がプーチンを支持する本当の理由
■プーチン大統領の“続投を望む”のは「72%」 一方、私が知る範囲では、ロシア人は22年に始まった侵攻を大歓迎というよりは「やむを得ない選択だった」という受け止め方が多い印象だ。 しかし、一人ひとりが心の奥深くでどう考えていようと、現実社会に影響を及ぼすのは、結局のところ、公の場での意見表明や投票行動といった具体的な言動だ。その意味で、大多数の人々がプーチン氏とウクライナ侵攻に対する支持を表明しているという事実から目をそらすことはできない。 もう一つ、プーチン氏を巡って気になる調査結果を紹介しよう。プーチン氏が大統領の任期切れを迎える24年以降の続投を望むか、という質問に対して、侵攻開始後の22年5月の調査では、72%もの人々が「望む」と回答したのだ。ロシアでは20年に、24年以降の大統領続投を可能とする憲法改正が行われた。その翌年の9月に行われた調査では「望む」と答えたのは47%に過ぎなかった。 憲法改正前を含めても、レバダセンターがこの調査を始めた12年以降、クリミア併合後の最も支持率が高かった時期を含めて、最も続投待望論が高まっているという結果となった。 ■「独立系メディア」の信頼度が極めて低い なぜこうした世論が形成されているのだろうか。ロシアのメディア状況と無縁ではないだろう。この点で、レバダセンターが22年6月に行った調査が興味深い。 ウクライナ侵攻が始まって以降、ロシアと世界で起きているできごとについての最も信頼している情報源を聞いた調査(複数回答可)では、結果は以下のようなものだった。 ---------- 国営テレビ 42% SNS 25% 国営通信社 20% 民間テレビ 15% 家族・友人・隣人 15% ロシアのネットメディア 10% ---------- 一方で、私たち日本の報道機関がしばしば「独立系」として引用する『メドゥーザ』や『ノーバヤ・ガゼータ・ヨーロッパ』などのニュースソースの信頼度は極めて低い。 ---------- ロシア国外を拠点とするロシアのネットメディア 4% 国外を拠点とするロシアの放送局 4% ---------- なお、18~24歳の若年層に限ると、最も信頼するメディアの首位はSNS(42%)で、2位の国営テレビ(20%)を引き離している。ただ、独立系メディアへの信頼度が低い点では、年長世代と変わらない。 もちろん、多くの人が国営メディアの報道を何からなにまで信じているわけではない。「完全に信じている」は31%。「部分的に信じている」が54%、「まったく信じていない」が11%という結果だ。 特に疑わしい目を向けられているのは、ロシア軍の死者数や負傷者数についての発表や、ロシア軍の残虐行為などが報じられない状況だ。