なぜ柏木陽介はJ3岐阜の新天地デビューで勝利に貢献できなかったのか
規律違反を繰り返した代償として、11年間所属した浦和レッズを退団してから44日。再出発を期して加入した新天地、J3のFC岐阜で元日本代表MF柏木陽介(33)がデビューを果たした。 敵地・富山県総合運動公園陸上競技場で25日に行われた、カターレ富山との明治安田生命J3リーグ第6節。0-1で迎えた後半11分からトップ下として投入された柏木だったが、ゴールに絡む仕事を演じられないままタイムアップ。試合後のオンライン取材で、悔しさのベクトルを自らへ向けた。 「久しぶりにピッチに立てたことはすごくよかった、と。ただ、プレーに関しては自分のよさというものをまったく出せないまま試合が終わったというか、負けたのは自分のせいと言っても過言ではないと思っているので、ここからチームに貢献できるように日々、努力していきたい」 公式戦のピッチに立つのは浦和の「10番」を背負って先発し、後半終了間際までプレーした昨年10月10日のサガン鳥栖戦以来、実に197日ぶりとなる。気持ちの高ぶりを感じながらも、実際に敵地のピッチに立つと、16年目を数えるプロのキャリアで初めてとなる感覚に襲われた。 「最初の方は喜びがありながらもすごく乳酸がたまって、身体が思うように動かないというか、思っていた以上に硬かったかな、と。別に緊張していたわけではないんですけど、久しぶりにピッチに立つ、公式戦でプレーすることに対して、こうした難しさがあるんだとすごく感じました」 前半34分にPKを決められた岐阜は、3勝1分けと開幕から無敗で臨んだ5試合目にして初めて先制を許していた。失点そのものも2つ目だったことが影響したのか。移籍加入後で初めてベンチ入りを果たし、戦況を見つめていた柏木の目にはチーム全体が浮き足立ったと映っていた。 「いつもと違う試合展開でチームとして慌てたというか、ちょっとイライラしていた部分があったと思ったので、ハーフタイムに『落ち着いてやっていこう』と声をかけたんですけど。自分が入ってからはもっとチームに声をかけなきゃいけない、と思っていたなかでそれができなかった」 J1リーグで通算392試合に出場した濃密な経験を、メンタル面で還元できなかっただけではない。今シーズンから指揮を執るFC東京の前トップチームコーチ、安間貴義監督のもとで採用された[3-1-4-2]から、柏木の投入とともに[3-4-2-1]にシステムが変わったなかで、前線に近いエリアでのプレーを意識しすぎたと反省する。 「自分はボールにたくさん触って、リズムを作っていくタイプなので。トップ下という形で入りましたけど、一回後ろに下がってボールを受けて、周りの味方にパスをさばいて、また前に出ていく、といったプレーができれば、もっとチームのリズムができたんじゃないかと」