リクシル・瀬戸欣哉社長インタビュー、「極端な需要が社会ニーズをつかむ」
記事のポイント①リクシルは10ドル以下のトイレなど社会課題の解決を起点に製品を企画する②アウトサイド・イン(社会課題起点のビジネス創出)の考えを取り入れる③瀬戸欣哉社長は、「極端な需要が社会ニーズをつかむ」と言い切る
サステナ経営には、アウトサイド・イン(社会課題起点のビジネス創出)の考えが重要だ。住宅設備大手リクシルは10ドル以下のトイレや低炭素型のアルミ形材など環境・社会課題の解決を起点に製品を企画する。瀬戸欣哉社長は、「極端な需要が社会ニーズをつかむ」と言い切る。(聞き手=オルタナ副編集長・池田 真隆)
――2021年にパーパスと3つのビヘイビアを策定しました。どのような思いを込めましたか。 リクシルの成り立ちを考えると、トステム、INAX、アメリカンスタンダード、グローエなど複数のブランドを有する会社一つに統合してできた組織体です。 そのため、アイデンティティを策定するには、みんなの心を一つにすることが重要でした。売上高や業界シェアトップを目指すというものでは、みんなの気持ちは一つにできません。いい会社になるためには、売上高や利益追求以外の何かもう一つの目標が欠かせないと感じていました。 ステークホルダーの誰もが共感できるものにしようと思い、パーパスを「世界中の誰もが願う、豊かで快適な住まいの実現」と定めました。3つのビヘイビアは、「正しいことをする」「敬意を持って働く」「実験し、学ぶ」です。 約5万5千人いる社員は異なるバックグラウンドを持ち、それぞれが多様な文化を持っています。文化は明文化されていないので、理解しづらいものです。だから、文化を理解しようとしても難しいので、明文化できないものは守る必要がないと考えたのです。 その変わり、一つになれる目標を作りました。3つのビヘイビアは一目で分かるものにしました。特異なものではなく、誰にとっても普遍的で分かるものにすれば、結果的には求心力になり、会社を一つにします。
■「良い暮らし」はトイレから始まる
――2013年からバングラデシュで簡易式トイレ「SATO」を展開しています。この社会的事業もパーパスと直結しているのですね。 どんな人でも「より良い暮らし」を求めています。それを実現できるように、世界中の人に製品を提供していくことをパーパスに打ち出しました。 トイレは、より良い暮らしの出発点でもあります。安全で衛生的なトイレを設置することは、より健康的な暮らしにつながるはずです。 リクシルがほかの住宅設備メーカーと一線を画す証として、パーパスに込めた「世界中の誰もが」という言葉に重点を置いたことです。 安全なトイレを利用できない人は世界に約35億人います。そして、世界で5歳以下の子どもが命を落とす最大の要因が下痢です。不衛生な水と劣悪な衛生環境が起因する疾患によって、一日に1000人が亡くなっているのです。 安全なトイレがない地域では屋外排泄をするしかありません。排泄物によって地下水や川の水が汚れて、その水で手洗いしたりすることで、子どもが下痢になってしまいます。