ホンダ「CB」の名を世界に轟かせた脅威の4気筒マシンと、スーパーバイクレースの夜明け
アメリカンホンダが用意したレーシングマシンは4台で、GPなどに出場する頼れる英国人レーサーを3人起用しています。4人目としてレースの1カ月前にホンダが声をかけたのが、他メーカーから契約の話が無く引退を覚悟していたアメリカ人のディック・マン選手(当時36歳)だったのです。 どのメーカーも車両規則変更1年目にありがちなチューニングの準備不足が発生し、ホンダも例外ではありませんでしたが、メカニックの経験もあるベテランのディック・マン選手は、エンジン音を聞き分け、無理せずに、しかも誰より速く「CB750 RACER」を200マイル先のゴールへ運んだのです。 目標を達成したアメリカンホンダは、翌1971年にはレースにエントリーしませんでしたが、ディック・マン選手はBSAの3気筒マシンを走らせて2年連続で優勝し、もう一度、レーサー人生のハイライトを迎えました。 デイトナでの優勝は大きな宣伝効果を持ち、速さと耐久性を実証した「CB750FOUR」は驚異的な販売実績を記録します。 その活躍は市販車ベースのレースに新たなバリューとファンを獲得し、現代につながるスポーツバイクの市場を形成していくことになりました。 ■ホンダ「CB750 RACER」(1970年型)主要諸元 エンジン種類:空冷4ストローク4気筒SOHC4バルブ 総排気量:748.6cc 最高出力:90PS/9000rpm 車両重量:170kg(乾燥) 【取材協力】 ホンダコレクションホール(栃木県/モビリティリゾートもてぎ内) ※2023年12月以前に撮影
柴田直行