「人間が絶滅しないかぎり、カルト問題はなくなりませんよ」――オカルトで現代を照らす、ムー編集長の悟り
昨今、クローズアップされているカルト問題をはじめ、私たちの生活の中で判断力が問われる事象は意外にも多い。かたやSNSなどネット世論では極端に白黒をつけがちで、ともすれば陰謀論に陥り、グレーゾーンをあえて楽しもうとする余裕がなくなっているのでは? そんな時代だからこそ、超常現象にフォーカスした雑誌『ムー』のような一般的には「あり得ない」と思われるアングルが「視点を変えてマクロ的に世界を見る」ヒントになるかもしれない。同誌編集長の三上丈晴氏を訪ねた。(取材・文:志和浩司/撮影:落合星文/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
“オカルト的なもの”を利用するカルトの手口
「カルトとオカルトはまったく違う」と三上氏は断言する。 「オカルトとカルトって字は重なっていますけど、語源から何から全然違いますから。いまカルトといえば、宗教の中でも狂信的な部分を指す言葉として使われていますが、オカルトは、ただ単に『隠されたもの』という意味で、いわゆる魔術的な話です。隠秘や神秘、神秘主義みたいなことが含まれます。ただ、そこから派生して心霊とか超能力とか、陰謀論も都市伝説も、全部オカルトにひっくるめられちゃっている。そこはしっかり棲み分けなければいけない」 だが、カルトといわれる団体では、教義や布教活動にオカルト的なものを内包することが多いのも事実だ。たとえば、あたかも超自然的な霊能力があるかのように装い、「あなたは前世での行いが悪かったために現世で不運が続いている」などといったオカルト的なストーリーを吹き込むことで、宗教的な活動に勧誘するケースもある。霊感商法なども同様に、不安をあおって不当に高い価格で物を売り込んだりする。
それには、宗教に共通する「表と裏」にヒントがありそうだ。 「仏教でいえば表が『顕教』、裏が『密教』。密教はその集団内だけで共有されるエソテリシズム(秘伝的・奥義的)なもの。そこには二つの要素があって、教義や知識の部分と儀式的な部分です。フリーメイソンがそうです。秘密結社の中で秘密の儀式をする。メイソン自体は宗教ではないのですが、秘密結社と呼ばれてしまうのは秘密の儀式を行っているからで、そこに魔術的なものが見られるわけです」