「人間が絶滅しないかぎり、カルト問題はなくなりませんよ」――オカルトで現代を照らす、ムー編集長の悟り
「支配したい人間」と「依存したい人間」が生み出すカルト
三上氏は、カルトに入ってしまうのも根本は交換関係に基づいていると話す。 「『バカだな、とっとと逃げればいいのに』と思うけれど、人間の中には『従属したい』という欲望があって、それは自由と表裏一体。自由は大変で、自分なりの価値観、生き方、なんでも自分で決めなきゃいけない。それは面倒くさいから誰か決めてくれ、飼い慣らされたほうが楽だっていう。洗脳とか軽く言うけど、本人の中にそういう欲望があるからカルトはそこを巧みに突いてくるんです。日本人なんか特に同調圧力とか、周りを見るじゃないですか。流行なんか他人と同じものを求めてかわいい、かわいいって。みんなが持っているものを持っていないと不安になる。カルトに一度入っちゃうと、その中にいれば安心なわけです。搾取されようが何されようが。そのうち家畜のように屠(ほふ)られるかもしれないのに」
「オカルトというと魔術的なものばかり見ちゃうけど、本質は『人間とは何か、ということに哲学的な答えが出ていない』ということ。だから神様が、天使が、悪魔が、スピリチュアルが、となる。人間は神ではないし不完全なものだ、ということを大前提にする。だから絶対を強いるってことは非常に危険です。こんなの100%ないよって思うときも、1%ちょっとニュートラルな部分、イエスでもノーでもないって部分を持つ。思考に余裕を持つということです。それによって次の発想ができる。そこにオカルトがあります」 オカルトはまさにその余裕の部分で楽しむもので、思考に余裕を持たせるためのものということになる。 「世間的常識からすれば超常現象なんてあり得ないわけでしょ。それこそ『ムー』が扱っているUFO写真なんか99%フェイクだろう、みたいな。でも、ひょっとしたらあるかもしれないとか、その1%の思考の余裕を持つためのオカルトの存在。どこか判断を保留するようなところを持っておく。逆もそうです。100%あると信じるな、トリックもあるかもしれないしインチキかもしれない。だから1%は、これは本物かウソかわからないってところを用意しておく。100%とか絶対という言葉は、思考停止になってしまうんですよ」 確かにそう考えていけば、従属することで思考停止に陥ってしまうカルトとはまったく異なるものだ、ということになる。そして三上氏は、「未来永劫(えいごう)、オカルトはなくならない」と明言する。 「すべてのことには本音と建前じゃないけれど、表と裏がある。それが人間の本質なんです。この世の中には教科書で教えている表の教えと裏の教え、思想がある。カルトもオカルトも本質的には人間の欲望であり、ただ単に『人間とは何か』というところにまで直結する。人間が絶滅しないかぎりはずっと続いていきますよ」
――― ■プロフィール 三上丈晴(みかみ・たけはる) 1968年生まれ、青森県出身。筑波大学を卒業後、1991年に学習研究社に入社。『歴史群像』編集部配属ののち、『ムー』編集部へ。2005年、5代目編集長に就任。また2021年、福島市の「国際未確認飛行物体(UFO)研究所」初代所長に就任。