阪神開幕白星発進の裏に矢野監督「9回打ち切り用采配」とフロント準備力
阪神は26日、神宮球場で行われたヤクルト戦との開幕戦を4-3と競り勝った。2つの失策が記録され今年も守備の不安をさらけだしたが1点をリードした8回から矢野監督は、4人の守備位置を代える大胆な「9回打ち切り用」采配で逃げ切った。奪った4点のうち3点はルーキー佐藤輝明の先制犠飛とサンズの2本の勝ち越し本塁打。新型コロナ禍でも外国人を開幕に揃えたフロントの準備力がチームに2年ぶりの開幕勝利をもたらした。今年の阪神は一味違うのかもしれない。
怪物ルーキー佐藤は球団初となるプロ初打席初打点
虎の開幕戦は黄金ルーキーのひと振りから始まった。2回、大山、サンズの連打で作った無死一、三塁の先制機に佐藤は“ライアン”小川がフルカウントからアウトローに投じた143キロのストレートをレフトへと運んだ。ヤクルトは内野をライト方向へ寄せる「佐藤シフト」を敷いていたが、佐藤は意識することなくレフトへ流した。どのボール、どのコースもフルスイングを貫く佐藤が、ボールに合わせにいくようなスイングをしたのは意外だった。 「しっかりと仕事をすることができてよかった」との試合中の談話から察するに、ここは1点を意識していたのだろう。大山が余裕で生還。ルーキーの初打席初打点は球団初だという。 試合はリードしても、3度、追いつかれる激闘になった。 勝ち越し点を2度、スコアボードに刻んだのはサンズだった。1-1で迎えた4回二死。カウント2-1から小川のナックルカーブをバックスクリーン右まで飛ばした。 「小川もいいピッチングをしていた。打てる球が来たらしっかり振ろうと考えていた。幸運にもいい打球が飛んでいい結果になった」 しかし、5回に先発藤浪の暴投で同点になった。6回に大山のタイムリーツーベースで再度リードしたが、7回に3番手のドラフト8位、石井が塩見に痛打を浴びて3度同点となった。敵地に嫌な空気が流れはじめた8回二死からチームを勝利に導いたのはサンズだった。 フルカウントから昨年の最優秀中継ぎ投手、清水が投じたやや外寄りの甘いスライダーを思い切り引っ張ってレフトスタンドの中段まで運ぶ。「9イニングしかないので、できるだけ早くリードしたかった」という。 昨年まで阪神で2軍チーフコーチを務めた評論家の高代延博氏は、ヤクルトバッテリーの配球ミスを指摘した。 「一発だけは避けなければならない場面でもっとも投げてはいけないボールを投げた。打撃フォームが開かずリーチのあるサンズにとって、外角寄りの変化球は得意なボール。そこまで2打席は全部変化球を打たれていた。普通なら選択しない球種だが、ヤクルトバッテリーは、今度こそストレートを待っていると裏の裏をかいたのだろう。考えすぎたし、裏の裏でいくならボールになってもいいくらいの厳しいボールでよかったが、中村はストライクゾーンに構えていた。次打者はルーキーの佐藤。内角を攻められた佐藤は、自分のスイングができず、この日の内容はよくなかったが、どこかで佐藤に回したくないという心理が働いたのかもしれない」