「小池都政1期目」を歴代知事と比較すると? 4年間を振り返る
【提言】難局で問われる都市経営とガバナンス
いま、コロナ禍対策を含め東京一極集中が大きな社会問題になっている。国土面積のたった0.2%の東京区部に約1000万人が住み1300万人まで昼間人口が膨れ上がった大都市東京のあり方はこれで良いのか。美濃部、鈴木都政は都内分散化を志向してきたが、不良債権処理を掲げた石原都政以降、都心集中化に回帰している。タワーオフィス、タワーマンションが都心部や臨海部に次々に建つのは、ある種都政の政策選択の結果である。 医療体制の充実だけがコロナ禍対策ではない。3密都市の解消、ゆとりある東京を取り戻すには「東京減反」政策に舵を切ることも必要ではないか。人・カネ・情報を一人占めする“東京機関車論”は古い。新しい東京をつくるという以上、発想の大転換がいる。 小池都政の4年間は1年目の改革の勢い、そしてここ数か月のコロナ禍対策に関わる頑張りを除くと、任期全般でいうと問題提起は良いが解決実績に乏しい。2期目はこれを跳ね返す努力が期待される。 都政は歴史の中にある。都知事も時代が生むものと言える。都政には太い筋が流れていると筆者は見ている。筆者の「分析モデル」に沿えば、その大きな流れは都知事交代を機に経済重視か生活重視か、ハード重視かソフト重視かで政策の振り子が振れてきているという点だ。 1964年の東京五輪を成功させた東龍太郎都政は首都高建設や五輪施設などハード重視、経済重視の都政だったし、一転して次の美濃部都政は福祉や教育、公害対策に注力したソフト重視、生活重視の都政だった。アメリカ大統領の交代とよく似ている。
いまの小池都政は性格付けが難しいが、未だ13年半続いた「石原都政」の残影を引きずったままではないか。豊洲市場移転で石原都政の問題をあぶり出しはしたが、築地の跡地利用は空転のまま。東京をどうしたいかの骨太の政策は見えない。 石原は当時の小泉純一郎政権との二人三脚により大幅な規制緩和、環境アセスの簡略化など経済重視、ハード重視の政策を展開した。長らく凍結されていた外環道の工事再開や羽田空港の国際線拡張などインフラ整備に大きく力を注いだ。一方で財政再建の名のもとに福祉や医療、教育、文化施策は縮小した。だが少子高齢化が進み、都民の不満、不安がこの面で高まっている。 小池都政は“初の女性都知事”が売りの一つ。前任の舛添都政は厚生労働大臣の経験もあってソフト重視、生活重視が期待され就任したが道半ばで消えた。小池百合子の売りは都民ファースト、都民の生活が第一なはず。そう言う以上、生活重視、ソフト重視の都政展開がイメージされる。 コロナ禍で傷んだ東京の経済立て直しも待ったなしだろうが、国と違い自治体としての都政がやるべきことは、まず「都民の安心、安全を守ること」が最優先ではないだろうか。「感染者ゼロ」「マスクをしない日常を取り戻す」、それが感染症対策の政策目標ではないか。 この先、少子化対策、人・インフラが老いる「老いる東京」対策、集中豪雨、首都直下地震対策など都民生活に直結する課題や五輪をめぐる様々な問題が山積みだ(詳しくは関連記事「都知事選、50億円を有益に 抜け落ちている『3つの論点』」を参照」)。 さらに、100年に一度のコロナ大不況が襲うとされ、法人関係など都民税の1兆円、2兆円の減収もあり得る。前例のない大幅な歳出増と大幅な歳入減の挟み撃ちに遭い、都財政は戦後最大の“危機”を迎えるかも知れない。 五輪特需の潤沢な財政で大盤振る舞いできた1期目と違い、これからは次々と襲いかかる厳しい難問と対決しなければならない。この先の4年間、これをどう乗り切っていくのか、大都市経営の手腕と都知事のガバナンス(舵取り)が問われていく。