「小池都政1期目」を歴代知事と比較すると? 4年間を振り返る
「3つの視点」から分析
都知事には(1)15兆円、17万人の巨大な官僚組織を動かす経営者(2)選挙公約をしっかり実現する政治家(3)首都の代表として世界の主要都市と友好関係を築く外交官――という3つの役割がある。その3つの視点から小池都政の4年間をみるとどうなるか。 【第1:経営者としての役割】 まず、小池は情報非公開、決定過程の不透明な都政の改革に挑んだ。改革の一丁目一番地に「情報公開」を挙げ、それまでのカネの使い方、決裁の仕方、文書の保存方法などを洗い直し、都政の「見える化」を図ろうとした。外部から委嘱した14人の特別顧問を率いて乗り込んだ姿は、「私はGHQではありません」と言っておきながらも、さながら「GHQ」の様だった。 調査チームを編成し、築地の移転や五輪施設の見直しなどに着手。石原都政の築地から豊洲市場への移転過程をあぶり出し、汚染対策や盛り土が不十分とし決定過程の不透明さを「都政伏魔殿」とも称した。就任から半年間、この問題で小池都政は脚光を浴びる。豊洲移転の2年延期、築地の再活用、都議会の政党復活予算(200億円)廃止、職員の内部告発「目安箱」の設置、都議会の自公勢力と都知事の癒着構造の解体まで俎上(そじょう)に載せた。 ただ、希望の党失敗後、都政改革の輝きは失せ、特別顧問制度は廃止され、「2020行革プラン」はつくったものの、それ程の成果は出ていない。 経営者としての知事のリーダーシップは職員のフォロアシップと噛み合ってこそ力が出る。この点、就任1年目の都庁内の小池評は低かった。職員アンケートで小池は46.6点、同時期の舛添は63.6点、石原は71.1点の数字が残っている。「職員を信頼していない」「特別顧問の意見だけ聞く」「知事の政策スタッフは職員だという根本が分かっていない」など厳しい見方が上がっていた。 【第2:政治家としての役割】 都民に約束した公約を実現するのが政治の基本だ。小池都政1期目は政策面の分かりやすい目標として、(1)待機児童ゼロ(2)介護離職ゼロ(3)残業ゼロ(4)都道電柱ゼロ(5)満員電車ゼロ(6)多摩格差ゼロ(7)ペット殺処分ゼロ――と“7つのゼロ”を掲げた。 ただ保育行政は区市町村の仕事であり待機児童解消と言っても後方からの財政支援にとどまる。同様に、残業の解消も各企業の働き方が変わらなければ実現できないなど、そもそも都政の公約としてどうかな? と首を傾げるものも含まれている。 ともあれ、公約として受け止めざっくり評価すると、4年間の通信簿は以下のようになるのではないかと考える。(〇=ほぼ達成、△=道半ば、×=未達成) (1)待機児童ゼロ=△ (2)介護離職ゼロ=× (3)残業ゼロ=△ (4)都道電柱ゼロ=△ (5)満員電車ゼロ=× (6)多摩格差ゼロ=× (7)ペット殺処分ゼロ=〇 小池都政は“カタカナ都政”、“キャッチコピー都政”とも言われている。その典型は都市づくりに3つのシティーを持ち込んだこと。安全安心な「セーフシティー」、差別なき「ダイバーシティー」、世界に開く「スマートシティー」という具合に。 上の7つのゼロ政策と絡むが、都道電柱ゼロはセーフシティーの売りだとか、待機児童ゼロ、残業ゼロ、ペット殺処分ゼロはダイバーシティーの売りだという。括り方はともかく、これらは都政の各分野にまたがり、毎年予算措置をしながら着実に時間をかけ実行していくものだから、4年間でそう簡単に答えが出るものではない。 一方、骨格として都政が歴史上抱えてきた東京を分散型都市にするのか都心集中型都市にするのか、といった骨太の都市構造論が欠落している。 【第3:外交官としての役割】 東京五輪・パラリンピックは果たして来夏実施できるだろうか。都知事の外交官の役割として、鈴木俊一は世界の“7つの大陸”を結び、世界都市東京をつくろうと努力した。各大陸には東京事務所も置いた。石原慎太郎はアジアの主要都市と国際会議を定期的に開き、アジアにおける東京の存在感を高めていった。 比較して、アラビア語を得意としカイロ大卒の経歴を自認する国際派小池百合子の都政にはほとんど外交官の顔は見えてこない。 五輪が控えているから向こうから人はやってくる、首都には多くの要人も訪れる、各国大使の離着任時に都知事を表敬してくる、外務省から東京都外務長という肩書で大使級の外交官も出向させている。 わざわざ自分から出かけることもなかろうということなのか。あるいは舛添の高額な海外出張費などの批判があったことから、蒸し返しをしたくないということか。小池都知事の海外出張は稀にしかなかった。コロナ対策や五輪の開催、上下水やごみ処理に優れた技術水準を有する都政が海外に技術協力できる場面はいくらでもある。 だが、それをセールスする動きもなく、外交面での小池都政は顔が見えない。