人類滅亡まで残り1分30秒を示す「世界終末時計」 これまで最も針が進んだのはいつか?
人類、ひいては世界、地球が終末を迎えるまでの時間を示す「世界終末時計」をご存知だろうか。1年に一度、アメリカの雑誌『原子力科学者会報』で更新されるこの時計がこれまでどのような国際情勢下で調整されてきたのかをご紹介する。 ■「世界終末時計」の針はどのように動かされるのか? 「世界終末時計」が誕生したのは1947年のこと。第二次世界大戦中の原爆開発、そして日本への投下を経て、アメリカの科学者らは戦後に『シカゴ原子力科学者』なる組織を立ち上げた。そしてその会報誌『原子力科学者会報』においてこれから核エネルギーをどう管理していくか、平和維持のために何ができるのかといったことを議論していたのである。 時は冷戦時代。米ソは一触即発の状態で、核戦争一歩手前のところまで追い込まれそうになっていた。科学者らはこの世界的危機を視覚的に伝えるために、アナログ時計の針を図案化することを思いつく。それで誕生したのが「世界終末時計」だ。まずは終末まで7分という時間が設定された。以降、同誌では専門家からの意見も取り入れながら議論をし、年に一度時刻を修正している。なお、時計が実物として存在するわけではなく、あくまで時刻設定を表紙のイラストで表したものである。 当初は核兵器の脅威を表すことを念頭に置いていたが、1989年10月号以降はそれだけでなく異常気象や環境汚染といった人類・地球に対する様々な脅威を加味して分針が修正されるようになった。要は「人類滅亡・世界の終末の危機が高まれば針を進め、それが緩和したと判断できるなら針を戻す」という作業をすることで、毎年世界がどれくらい危機に瀕しているかを伝えているのである。 2024年時点では、前年と変わらず残り1分30秒とされた。これは2023年10月7日から続いているイスラエルとパレスチナ自治区の戦争の影響が大きい。ちなみに、2021年は残り1分40秒で、これは新型コロナウイルス感染症が世界的に蔓延したことによる時間設定だった。 さて、1947年以降最も針が進んだのはいつか。答えは2023年、前年から10秒進んで残り1分30秒になった時である。ロシアによるウクライナ侵攻で核戦争のリスクが高まり続けたこと、ロシア・チェルノブイリ原子力発電所付近で戦闘があったことにより、放射性物質による広範囲の汚染の可能性が高くなったこと、さらに北朝鮮のミサイル発射や中距離弾道ミサイル実験、気候変動、新型コロナウイルスの蔓延の継続などが考慮された結果だった。 今年、2023年から時計の針が戻されなかったということは、つまり今もなお人類は終末に最も近い危機的な状況におかれているということになる。 反対に、これまで最も針が戻されたのは1991年の17分前だ。ソビエト連邦が崩壊し、ユーゴスラビア連邦が解体された年だった。
歴史人編集部